メンバーがメンバー自身のためだけにライブをやるとなったらどうなるんだろう?

 

 

 

 

――ピークを迎えていないという話に関連して、映画の中で“無観客ライブ”をやったことがキッカケになったと思うのですが、THE YELLOW MONKEYが8月6日に渋谷La.mamaで“プライベートギグ”と名付けたサプライズライブを行い、そこで30周年記念のドームツアーを行うことを発表しました。

 

 La.mamaのライブ、見たかったですね。どんな世界も一緒だと思うんですけど、ある地点まで上り詰めた人って、そこから先が一番大変だと思うんです。だって、さらに誰も見たことのない景色を見て行かなきゃいけないわけですから。それは映画の中で、トニー・ヴィスコンティという音楽プロデューサーに僕が一番聞きたかったことでもあったんです。彼の答えがすごく素敵で、「常に高みを目指していくんだ」という姿勢や「5年前、10年前の自分も好きだ」という心構えが、アーティストだったりアスリートだったりにすごく刺激を与えてくれてくれると思うんです。その気持ちを持ち続けるのは簡単じゃないので、THE YELLOW MONKEYはそうなんじゃないか? という気持ちと、そうであって欲しいという気持ちが僕の中にはありますね。

 

 オトトキ

 

――La.mamaでの無観客ライブは映画の一つの魅せ場となりましたが、あのアイデアはどんなところから生まれたのでしょうか?

 

 音楽という表現は、何かを伝えたくて個々の内側からアウトプットしていくものですけど、ツアーに同行してライブを撮っていく中で、お客さんを挟んでライブを撮ると、お客さんの視点をブロック出来ないなと思い、「映画のためだけにライブを撮りたい」と思ったんです。そこからアイデアが膨らんで、「お客さんのためだけではなく、メンバーがメンバー自身のためだけにライブをやるとなったらどうなるんだろう?」と考えました。もちろんバンドはファインダーを通してお客さんに訴えかけていくんですけど、その空間にカメラマン以外の人間を入れずにやった時、何が起こるんだろうというのを見てみたかったんです。通常のライブと同じ曲数のセットリストを組んでもらって、普通のライブの長さでやってもらうことになって。そこで何が起こるかを撮影したいというのが無観客ライブの成り立ちでした。

 

――無観客ライブを撮ってみての感想はいかがでした?

 

 最初は、戸惑いがあったとしても、最終的にはお客さんがいないことを忘れて、自分たちのためにやる曲が一曲あればそれでいいと思ったんです。それが蓋を開けてみると、最初こそ戸惑いがあってもどんどん地に足ついてくる感じがあって、それもすごく面白くて。僕にとっては全曲見応えのあるステージになりました。

 

――普段のステージでは見せないであろう表情がありましたよね。

 

 そうですね。本来、届けるべきお客さんがいないので。もちろんリハーサルとも違うもので、すごく近い距離で撮られてるというのが、ミュージシャンにとってもすごく不思議な感覚だったと思うんです。

 

 

 

 

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