日本の伝統楽器である津軽三味線、篠笛、鼓、そして、西洋の伝統を受け継ぐヴァイオリンを融合させたインストバンド・竜馬四重奏。独自のオリエンタルサウンドを奏でる彼らは、日本国内はもちろん、世界各国でも公演を成功させている。人と人の繋がりをより感じたという2020年に制作されたアルバム『connecting』を2月3日(水)にリリースする彼らに本作への想い、ライブについて、今年の目標など話を聞いた。好きな楽曲が全く違うというメンバーがセレクトしたプレイリストも紹介しているので、最後まで読んでほしい。

 

 

日本人にしかできないエンターテインメントを、胸張って世界でやっていけるものを何か作りたいなと思ったんです

 

 

 

──竜馬四重奏の皆さんが担当楽器を始められたきっかけを教えてください。

 

竜馬(ヴァイオリン):僕は、5歳の時に習い事として母から“ヴァイオリンをやってみないか”と言われて、今に至ります。

 

Ryoma

 

雅勝(津軽三味線):もともと高校生の時にバンドをやってたんですが、一人でできる楽器がないかなと探していた時に津軽三味線に出会って。その魅力に惹かれて22歳の時に始めました。

 

Masakatsu

 

翠(篠笛):うちは祖父も伯父も父も演奏家で、小さい頃にも手ほどきは受けていたんですが、本格的に取り組むようになったのは、祖父が高齢になったことと、父が東京芸術大学で教えることになって、自分も教わりたいなと思ってからです。なので、20歳過ぎてから始めました。

 

Sui.

 

仁(鼓):私も翠と同じで家が代々鼓奏者をやってまして、小学3年生の頃から家元についておりました。

 

Zin

 

──そんな4人がグループを組むことになった経緯を教えてください。

 

竜馬:竜馬四重奏は2008年から活動を始めたんですが、その少し前あたりから僕自身が日本人として、日本人らしいエンターテインメントを世界に発信できないかなと考え始めていて。当時23歳だったんですが、ヨーロッパを周った時にヴァイオリンは西洋の楽器なので、ヨーロッパの人たちから見ると、“それは私たちのアイデンティティの楽器だよ”というところがあって。実力とかではなく、イメージ的な部分で日本人だと勝てないことがあると感じたんです。それがちょっと悔しいなと思って、それなら日本人にしかできないエンターテインメントを、胸張って世界でやっていけるものを何か作りたいなと思ったんです。それで日本の和楽器の方たちと一緒にやれば、日本人らしいエンターテインメントになるんじゃないかと思って、メンバー一人ずつにお声がけして結成しました。

 

──雅勝さん、翠さん、仁さんは竜馬さんから声をかけられて、どんなことを思いましたか?

 

:和楽器は“馴染みがない”という方多くて日本の中でもわりと特異な目で見られることが多いんです。なので、私たち和楽器奏者としては、もっと知ってもらいたい、もっと身近に感じてもらいたいという願いをいまだに持っているんです。竜馬くんに声をかけてもらった時に、それがこの竜馬四重奏という形で実現できるんじゃないか、目指すものになるんじゃないかと思えたので、一緒に取り組むようになりました。

 

雅勝:僕もまったく同じですね。

 

:あと、純粋に楽しかったというのもありますね。古典の中でやっていることももちろん素晴らしいんですが、竜馬四重奏のようなライブをすることはないですから。

 

 

 

竜馬四重奏-RYDEEN [Official LIVE Video]

 

 

 

──ヴァイオリンにしても和楽器にしても伝統のある楽器で、伝統の継承と革新は時に対立することもあると思いますが、周りの反応はいかがでしたか?

 

:僕は父に7、8年ぐらいこのバンドをやっていることを言えなかったので(笑)、内緒にしてました。伝統芸能の世界はそういう堅い考えがいまだにありますから。最近はそれも和らいできたかなというところは感じます。

 

竜馬:昔に比べたらね。

 

:バンド活動みたいなことは「浮ついている」と言われるような時代だったんですよ(笑)。20年ぐらい前の話ですが。今は時代とともに緩和されてきて、そこまで攻撃されることはないと思います。認めてくれているのかもしれないですね。

 

雅勝:津軽三味線は吉田兄弟さんとか上妻宏光さんとか先駆者の方がすでにいらっしゃったので、ソリストとして活動していい、みたいな雰囲気はありましたね。だから活動しやすかったですね。

 

 

 

「アートにエールを!」-雫 [竜馬四重奏ver]

 

 

 

──好きな楽曲やよく聴かれている音楽が皆さんバラバラだと伺ったんですが、今回作っていただいたプレイリストを踏まえつつ、普段はどんな音楽を聴かれているのか教えていただけますか?

 

竜馬:僕はもともとクラシックがベースで、いわゆるオーケストラのサウンドが好きで、そこから映画音楽を好きになって今の活動に至ります。そういったジャンルからポップスやインストゥルメンタル、流行りの音楽まで幅広く好きなのですが、特定のアーティストが好きというわけではなく、その時に自分が気に入った曲を聴いています。今回のプレイリストは「ステイホーム中に勇気づけられた楽曲集」ということで、T-SQUAREの「TWILIGHT IN UPPER WEST」とMrs.GREEN APPLEの「青と夏」を選びました。「青と夏」は本当に夏っぽい爽やかなサウンドで、去年の夏はコロナで花火大会もバーベキューも行けませんでしたが、この楽曲の中にある世界観は今までと同じ夏の世界で、聴いていてすごく元気になりましたね。

 

雅勝:一生青春だもんね。

 

竜馬:一生青春、が僕のテーマなので(笑)。

 

:僕はフュージョンやアメリカンロック、ソウルミュージックが好きで、今回のプレイリストを作るにあたり、他と被らないのはソウルミュージックだろうということで選曲しました。カーティス・メイフィールドの「Move on up」とマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの「Ain’t No Mountain High Enough」の2曲です。

 

雅勝:僕は基本的に歌ものが好きなので、ダニエル・パウターの「Bad Day」と、玉置浩二さんの「Mr.Lonely」を。玉置浩二さんはコロナ禍の中ですごく聴いてました。

 

:僕は普段、音楽はあんまり聴かなくて。カラオケが大好きなんで、自分が歌いたい歌を練習のために聴くっていう感じです。その中でTM NETWORKの「Time Passed Me By(夜の芝生)」と、アニメも好きなので「うたの☆プリンスさまっ♪」というアニメの「QUARTET_NIGHT」を選びました。

 

──元気が出る曲や癒されるような曲がセレクトされていますね。活動が止まってしまったこのコロナ禍で、どんなことを考えていらっしゃいましたか?

 

竜馬:2020年が始まって、オリンピックイヤーで僕らもいろいろな出番があるかなと思っていましたし、国内外での公演も多数決まっていたんです。それが、あれよあれよといううちに世の中が変貌してしまって、僕たちもほぼすべての演奏の機会を失いました。そうなった時に、こんな時だからこそ僕らが皆さんにできることって何かあるだろうかと考えさせられました。人と人の繋がりをより感じた一年になりましたし、音楽業界的にはこれから配信にも力を入れていくでしょうし、自分たちも世の中のニーズにあった活動をする準備としては、いい期間になったかなと思います。

 

RyomaQuartet1

JAPAN EXPO MALAYSIA_2018

 

──そういう想いがアルバムタイトルの『connecting』に繋がっているのかなと思いますが、今作の制作にあたって、方向性やテーマについてどんなことを思われていましたか?

 

竜馬:こういう時なのでみんなを応援できるような、“エール”を一つのテーマとしてアルバムを作ろう、と、それぞれがデモ曲を持ち寄って作り始めました。今回はアルバムのコンセプトが今の時代に合わせてはっきりとしていたので、それに合う楽曲を意識しました。僕は「Stand Up」という曲を書いたんですが、“エール”といってもいろいろな応援の仕方、支え方があると思うんですね。僕ら自身もたくさんの皆様に支えられているわけなんですが、そんな中で僕は鼓舞する側の、“頑張ろうぜ、みんなで生き抜いていこうぜ”、“もう一度立ち上がろうよ”っていうイメージで作りました。

 

RyomaQuartet2

「Ryoma Quartet LIVE 2019 in NewYork 〜Sekai-Japan〜」

 

──雅勝さん作曲の「VIVA!NIPPON」も、お客さんと一緒にクラップで盛り上がれそうな元気になれる曲ですね。

 

雅勝:まさにライブのお客さんが見えたというか、そういう景色もイメージしながら作った曲です。

 

──翠さん作曲の「雨」や「星・月・夜」は癒しの楽曲ですね。

 

:前向きな曲が多かったので、癒しの曲も必要かなと思って作りました。「雨」に関しては、作りながら“これは雨のイメージだな”と思って。日本にはいろんな雨を表現する言葉がありますけど、雨のある情景はどういう曲で表現できるかな、というところに重点をおいて作りました。

 

──「ハナミズキ」「情熱大陸」のカバーも収録されていますが、どのような経緯で選曲されたのでしょうか?

 

竜馬:候補曲はたくさんあったんですが、「ハナミズキ」に関しては人の幸せを思う、人を大切にするという思いがコンセプトにある楽曲なので、アルバムのコンセプトに合うなと思いました。「ハナミズキ」がバラードなので、アップテンポでみんなが盛り上がれる曲も入れたいなということでもう一曲は「情熱大陸」を選びました。いろいろなイベントに出演した時に、足を止めてくれる曲だと思うんですよ。オリジナルもとてもカッコいいんですが、それを僕たちなりにカッコよくアレンジした楽曲を聴いていただいて、和楽器の魅力を感じてもらったり、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

 

 

 

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