yoshiharushiina

 

 

 

化学反応が起きる再会ができたと思うよね

 

 

 

:ところで、僕が疑問に思ったのは、例えばいい曲ができたとするじゃないですか。それをSURFACEに使うのか、椎名ソロに使うのか、どうジャッジしてるのかなと思って。

 

椎名:それはね、締切!() 例えば、グッズの購入者特典として曲を作ることになったときに、『PASS THE BEAT』の制作に追われてる永谷から新たに曲が生まれるわけがなくて。そのときに何となくこれはソロかなと思ってた「頭の中の3LDKライフ」という曲があって、“椎名慶治と永谷喬夫”という名義でこの曲をプレゼントしたの。ソロになるだろうなと思ってた曲をSURFACE色に染めていく作業が、ついこの間起きたわけですよ(笑)。

 

:それぞれのプロジェクトに特徴があるから、元ネタは一緒でもアレンジでどっちにもいけると。

 

椎名:それ!ソロとSURFACEの一番大きな違いは、永谷がギターを弾いてるかどうかだから。超絶テクニックのギタリストは世の中にいっぱいいるけど、「これって永谷さんでしょ?」とわかる音だったりフレーズを持ってるのは、やっぱりあいつの個性だと思うし、どんなメロディだろうが俺の隣であいつがギターを弾くだけでSURFACEになっちゃうから。次のソロアルバムのためにボイスメモもストックしてるし、カッコよくなりそうな曲もあるけど、急遽SURFACEでリリースしなきゃいけなくなってそれを使っても全然支障がないし、じゃあこれをJET SET BOYSで使おうとなっても大丈夫だし。逆に、ソロで「DOUBT!! w/ZERO」はギターレスの曲で、=絶対にSURFACEじゃない。そうじゃないと2カ月後に出る『PASS THE BEAT』とかぶっちゃうから、そうやって初めて計算して作った曲ですね。 

 

:みんなはSURFACEとソロと、どっちを軸に動いてほしいんだろう?()

 

SURFACE6

 

椎名:正直、みんなはSURFACEに復活してほしかっただろうし、うれしいと思ってるはずなんだよ。なんだけど、途端に俺のソロが止まったのも、ちょっと思ってたのと違うのよ。「あれ? 私、ソロの椎名くんの生々しいリリックが好きだったんだな」って今はなってる時期なの()。「RABBIT-MAN」で飛び跳ねたいけどSURFACEだと歌わないし、逆に俺がソロをやってると、「なにしてんの」はSURFACEの曲だから歌わないとか、みんなもどかしい想いをしてるんじゃないかな。だからこそ、来年は2年休んでたソロをみんなに楽しんでもらって、「SURFACE聴きてぇ〜!」となってきたら、一夜限りのJET SET BOYSをやるとか()。そういう流れがみんなの求めてるものなんじゃないかな。

 

:そう考えたら、椎名さんは本当に休みがないですね。

 

椎名:この10年間、本当に休んでないよね。でもね、可能性を秘めた曲ができたときのワクワク感がハンパないんだよね。ゲームを超えます!()例えば、『PASS THE BEAT』の「クロール」という曲は、永谷がデモを完璧に作り上げてたんだけど、「オケを作っといて何なんだけど、メロディがちょっと弱いから聴かせたくない」って言われたの。だから、「できればこのオケに引っ張られないで、椎名くんの思うメロディをマイクの前でバーッと歌ってみてほしい」って。それから実際に俺が歌ったとき、永谷も「うわ~!」ってなったし、俺も自分で歌いながら「うわ~!」ってなるような化学反応がやっぱり起きるわけ。そうしたら、これを形にして早くみんなに聴かせたいなってまた思うし。

 

:よくグループの解散の理由で「もうこれ以上、化学反応が起きない」とか言いますけど、SURFACEはまだまだ起きてるし、だから続いていくという。

 

椎名:「俺たち、何で解散するんだろう?」という疑問符が残ったままの別れだったからこそ、化学反応が起きる再会ができたと思うよね。。自分がプライドを持って作るものに対して、それを許せる相手ってなかなかいないと思うんだよね。永谷だから俺は許せるし、俺だから永谷も許せたはずだし、野口圭以外の作詞家にいちゃもんを付けられたら、やっぱり許せないと思うし。俺がそれをできる関係性はこの世に永谷と野口の2人しかいない。それができた関係だから結局、SURFACEは仲良いんじゃないかな。

 

SURFACE2

 

:その言葉を聞くと、本当にSURFACEが再始動できてよかったなと思います。

 

椎名:よかった!でもそれは、待っててくれたお客さんがそこにいたという結果があってこそで、豊洲PITで復活ライブをやってあれだけの人がもう1SURFACEを見たいと思って集まってくれたから。

 

:椎名さんのソロの話をしていてもSURFACEの話にもなるし、また椎名さんの話にもなるし、切っても切り離せないですね。

 

椎名:ソロも10年やってきたら、それを愛してくれる人がいる。ってことは、その表現する場を奪っちゃダメで。だけどSURFACEも再始動して『ON』と『PASS THE BEAT』というみんなが愛してくれる作品を作っちゃったから、これまたなくしちゃダメで。ってことはこれからも人の2倍動くってこと?()

 

:アハハ!()椎名さんの10年の後半は、やっぱりSURFACEありきの物語になりましたね。

 

 

椎名慶治という土台があって、その上でいろんな花が咲いた10年だった

 

 

:コロナ禍で不可抗力も多かった2020年でしたが、椎名さんとしてもSURFACEとしても、いろいろとチャレンジした1年にはなりましたね。

 

椎名:ソロでリリースしたのは2曲だけど、「頭の中の3LDKライフ」とか「ただいま」、「GOOD GIRL」という曲も作ったし。今年は達成感を感じられる年じゃなくて、全てのことに対して「どうなっていくのかな?」と考えながら、どう楽しめるかを模索した年だし、発展途上の年。また来年もそれが続くんでしょうね。

 

:続けていたらやっぱりいろんなことがありますね。

 

SURFACE3

 

椎名:本当にビックリすることだらけの10年でしたよ。最初はSURFACEが地縛霊のようにいて()、好きだから切り捨てられないところもあって、お客さんもソロよりもSURFACEが見たいんじゃないかという不安もあったし。でも、振り返ってみると、ちゃんと心から楽しんで、いろんな出会いがあって、その中でSURFACEの再始動も巡り合わせであった。椎名慶治という土台があって、その上でいろんな花が咲いた10年だった。May’nちゃんとAstronautsという花も咲いたし、JET SET BOYSという花も咲いたし、SURFACEもその1つで。だから俺は土というか、ちゃんと椎名慶治のソロが地盤にある。それがあった上でのSURFACEで、永谷にも「椎名くんはソロを前提にSURFACEをやってほしい」と言われたから、再始動を決めたんで。

 

:椎名さんがソロ10周年を迎えた1110日にTwitterで、「今後の活動の主軸になるのも絶対にソロです」と言い切っていたのがすごいなと思ったんですよ。

 

椎名:ふわふわしたまま「SURFACEをやるの?ソロをやるの?」じゃなくて、自分の口から記念日にハッキリ断言したかったんですよね。

 

:逆にこの10年で変わらないなと思ったことはあります?

 

椎名:自分が本当に気に入ったものしか世に出さないスタンスですね。「これはタイアップが付いたからビジネスと割り切って出そう」みたいな妥協が一切なかった10年でした。SURFACEの『ON』も『PASS THE BEAT』も、ソロの『RABBIT-MAN』、『S』、『MY LIFE IS MY LIFE』、『-ing』に関してもそうで、これからもそれは変わらないと思うし、自分が納得したものしか今後も出さないようにしたいですね。

 

:椎名慶治の妥協なき10年。

 

椎名:でしたね。最初のSURFACEの頃はちょっと妥協しましたから()8回書き直した曲もあるぐらいですから()1回目が一番やりたかったことで、2回目がちょっとやりたかったことだから、8回も妥協したらそれはもうどういう曲なんだろう?()今は自分たちが一発で気に入ったものをパッケージする。そんな作り方ができるようになったのも感謝だし、それが時代かもしれないし。

 

:それこそ初のバラードアルバム『Ballade』を予告なしに突如リリースして、みんなにすぐ届けられる時代ですからね。

 

椎名:あれにはみんなビックリしたんじゃないかな?() 最初から告知なしにリリースするつもりだったわけじゃなくて、コロナのせいでスケジュールが全部後ろにズレて、タイミングが『PASS THE BEAT』と丸かぶりになっちゃったんです。『Ballade』は記念日だからちょっと聴いてよという想いだけど、『PASS THE BEAT』は命を懸けて売らなきゃいけないアルバムだから。リリースライブもあったし、それが終わるまではSURFACEを応援してほしいから、もう当日に言うかと()。たまたまああなっちゃった流れなんですよね。

 

 

 

椎名慶治 / New Re:Arrange AlbumBallade」ダイジェスト

 

 

 

 

 

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