2010年にソロ活動をスタートさせた椎名慶治が、2020年で10周年を迎えた。2018年にSURFACE再始動以降は、ソロとユニット、さらには高橋まこと(ex.BOØWY・Dr)らと結成したバンドJET SET BOYSなど、さまざまな現場でその歌声を響かせ、今年もソロとして2曲のデジタルシングルと初のバラードアルバム『Ballade』、SURFACEとしてアルバム『PASS THE BEAT』をリリース。そんな椎名慶治のソロ活動10周年を記念したWIZYプロジェクトの購入者特典として11月にオンライン公開インタビューを実施。ファンにはお馴染みの奥“ボウイ”昌史氏との2時間にわたる熱いトークをギュッと凝縮した、椎名慶治の濃厚なる総決算をここに!
10周年って言われても、「やったー!」みたいな感じはなくて
奥“ボウイ”昌史:(どんどんログインして画面上に増えていく参加者を見て)うわ~いろんな人が公開インタビューを見てくれてますね。何か皆さんの存在をちゃんと感じるなぁ。
椎名慶治:こうやって見るとさ、1人ずつ生活があって、人生があって、自分なりに働いて、そのお金で買ってくれて…いや~これはとんでもないね。(ここで本番がスタートし画面が切り替わり)こんにちは!見える?聞こえる?今日はですね、俺の一番信頼してるライターさんの奥“ボウイ”昌史さんに来ていただいて。
奥:よろしくお願いしま〜す!インタビューって普通はマンツーマン+スタッフぐらいの少人数で、密室でやるもんですけど、こんなに多くの人前で話を聞くことなんてなかなかないですから。でも、椎名さんは口が立つから大丈夫かな(笑)。
椎名:そういうのやめて!プレッシャーになるから(笑)。今日は「KI?DO?AI?RAKU?」というシングルと、『RABBIT “LIVE” MAN』というライブBlu-rayをWIZYで購入してくれたみんなと楽しんでいければと思うんだけど。

椎名慶治LIVE Blu-ray『RABBIT “LIVE” MAN』 ジャケット写真

椎名慶治シングルCD「KI?DO?AI?RAKU?」ジャケット写真
奥:まずは11月10日に椎名さんがソロとして10周年を迎えて。
椎名:すごくややこしいのが、2018年にSURFACEが再始動するじゃない、そこから2年は「俺、ソロやってたっけ?」みたいに時が止まってる気がしてるわけよ(笑)。だから10周年って言われても、「やったー!」みたいな感じはなくて。
奥:人間って何をやっても10年は続かないらしいんですよ。だからこそ、10年続いてることには適性だったり縁があると。
椎名:確かに。10年やってることって他にあるかな…ゲームだわ俺。変わってないわ(笑)。
奥:今日も本当にギリギリまでゲームしてましたもんね(笑)。
椎名:10年というか35年ぐらい続いてる(笑)。まぁ俺はそもそもゲーム音楽がきっかけで音楽を始めたぐらいだから。続けたかったのにやめざるを得ないこともあるし、そう思うと「ありがとうございます、10周年!」ですね(笑)。
奥:ファンの皆さんも共通の想いだと思うんですけど、今年のSURFACEと椎名さんの活動の情報量が多過ぎて、追いかけきれない(笑)。
椎名:ファンの方にもよく言われるんだけど、俺も分かってないから(笑)。マネージャーに「明日はチケットの発売日です」「明日はグッズの発売日です」「明日はソロのサイン会があるから遅れずに来てください」とか言われて、全部前日にスケジュールが判明する(笑)。もうずっとそういう生き方。
奥:それでソロで10年、SURFACEで22年(笑)。
ミュージシャンとして今やらなきゃいけないことって、こういうことなんじゃないかな
奥:今年は椎名さんのみならず、ここにいる全ての人がコロナ禍によって生活環境が変わって。そんな中で生まれた新曲「KI?DO?AI?RAKU?」ですけど、「今だからこそ応援歌を書いてほしい」というマネージャーのひと言から全ては始まったと。
椎名:ちょうどSURFACEのアルバム『PASS THE BEAT』の制作中だったので、コロナでライブが中止になった想いとかも全て込めるために、永谷(喬夫・Gt)と「いいものを作らなきゃな」って言い合いながらレコーディングしてたんですけど、合間にスッと隙間ができる日もあって。マネージャーがその隙間を見逃さず、「椎名さん、ここ空いてるんですよ!新曲を作りませんか?」って…そもそも自分からそんなことを言うタイプではないんですよ。そんなマネージャーから、「今こそ椎名の応援歌がほしい」と言われる日が来るなんてと。そこから「KI?DO?AI?RAKU?」が生まれたんですよね。これは早めに聴かせたいねということで、急遽配信されて、その1カ月後には「DOUBT!! w/ZERO」も配信されて。今回のシングルには2曲とも入ってます。
奥:この10年で業界も変わって、そうやってアイデアをすぐ形にして、みんなに届けられる時代になりましたもんね。
椎名:プレスしてジャケットを撮って…とかやってたら2カ月ぐらい後になっちゃうから、想いをすぐに届けられる今のシステムには感謝ですね。ただ、マネージャーも俺と歳が近いから、世代的にCDを欲しがるんですよ。だからこそ、今回のWIZY限定盤が実現したのも面白いなと思って(https://wizy.jp/project/515/)。ただ、「せっかく盤にするなら、もう1曲ぐらい欲しいんですけどね~」って言われたときは、「ほら始まった!」と思いましたけど(笑)。後輩のLUV K RAFTに、「DOUBT!!」のリミックス、リアレンジを好きにやってもらったものを入れようと。3曲目の「DOUBT!! w/LUV K RAFT」バージョン、俺は結構好きなんだけど。
奥:チャットにも「CD嬉しいです」という声がありますね。椎名さんと同世代とかだと、やっぱりモロCD世代ですからね。
椎名:よく「歌詞が見たい。紙で読みたい」って言われるんで。ってことは=歌詞を読みたくなる作品をこれからも作らなきゃいけないってことじゃん?超面倒臭い!(笑)
奥:椎名さんは他のアーティストと比べて歌詞の言葉数がめちゃくちゃ多いですよね。
椎名:最近、『PASS THE BEAT』を引っ提げて2日間だけSURFACEのライブをやったんだけど、歌詞がすっごい覚えづらかったの。何でかなと思ったら、そもそも覚えなきゃいけない文字量が多いんだ(笑)。
奥:(ライブで歌詞を飛ばす)長年の問題の原因、それですね(笑)。もっと短い言葉の繰り返しを多用するアーティストもいますから。
椎名:時が動いてない歌詞がどうも苦手で、最後の最後で変えちゃうんだよね。それがまた自分を迷わせるというか、ライブのときに1番、2番と終わってもホッとできなくて、ずっと緊張してるという(笑)。
奥:でも、椎名さんのそういう歌詞の世界観に魅了されるからこそ、ブックレットが付いたCDが欲しくなるんでしょうね。例えば、「KI?DO?AI?RAKU?」の“大人って絶対 子供よりもさ/小さな事で傷ついてんだよ”というフレーズも、コロナ禍で何でもかんでも自己責任を求められる中で、こういう小さな心のしこりを拾い上げて解放してくれるのは、椎名慶治ならではだなと思いました。
椎名:嬉しいですね。「この時期にリリースしたいから曲を作ってほしい」というやり方はいつもしてるけど、今回は「今はみんな疲れてるから、応援歌を作ってほしい」って、ちょっと期待されてるわけじゃないですか。こっちもそれに応えたい気持ちはあるし、リリックはいつも以上にこだわりましたね。
奥:“心の隅で 小さくうずくまる/本音を聞かして”とかも、素敵な表現だと思いました。何げないけど椎名さんの言葉選びというか。意義あるタイミングの作品だったなと。
椎名:ありがとうございます!ただ、ずっと応援し続けると、それはそれで受け取る側も疲れちゃうと思ったんですよ。そこで俺がマネージャーに打診したのが「DOUBT!! w/ZERO」で。今度は、音楽を純粋に楽しんでもらう。ミュージシャンとして今やらなきゃいけないことって、こういうことなんじゃないかなって。応援することと、ただただ音を楽しんでもらうこと。そのどちらもリリースさせてくれたのはうれしかったですね。
照明とバンドの力だけで演出するような、エンタテインメントじゃなくてライブがしたい
奥:WIZY限定アイテムのもう1つが『RABBIT “LIVE” MAN』というBlu-rayで。5周年のときは『RABBIT “FILMS” MAN』というMV集が出ましたけど、今回はライブ映像のベストテイク集という。
椎名慶治 / LIVE Blu-ray「RABBIT “LIVE” MAN」[Trailer]
椎名:オフィシャルで「どのライブが印象深かったですか?」、「どのライブのどの曲が好きですか?」とアンケートを採って、その結果を踏まえつつ、自分なりにピックアップをしたのがこの30曲で。
奥:僕も見させてもらいましたけど、まずは単純にライブのクオリティが高い。
椎名:ありがとうございます!俺は照明とバンドの力だけで演出するようなエンタテインメントじゃなくて“ライブ”がしたいんですよ。映像とか視覚効果で楽しませ過ぎると歌が入ってこなくなっちゃうんで、なるべく光と音、声だけで勝負する。このBlu-rayの映像を見てると、いい意味でそこは10年間ずっと変わらずに、ブレずにライブができているのは自分でもいいことだなと思うし、何より楽しんでますからね。
奥:変わったのは体型だけということですね(笑)。
椎名:アハハハハ!(笑)
奥:ソロの初期は若い! 痩せてる!何だったら友森(昭一・g)さんすら痩せてる(笑)。
椎名:そうなのよ!本当にサポートメンバーも全員(笑)。今回のアンケートで票が一番多かったのが「取り調べマイセルフ」で。この曲を歌ってる途中で俺が泣き崩れてるからなんでしょうけど、本当ならカットしたかったんですよ。だって恥ずかしいじゃないですか。でも、1位になっちゃったからカットできなくなって、覚悟を決めて収録したという。
奥:これは絶対に入れないといけない曲だなと思いながら見てました。「めちゃめちゃ泣いてもーてるやん!」とは思いましたけど(笑)。
椎名:当時、SURFACEが解散して5カ月で1stミニアルバム『I』を出して、MVとしてみんなが最初に「椎名慶治のソロはこういう曲なんだ」と認識したのが「取り調べマイセルフ」なので。それをライブで歌ったとき…あれは感極まるとかじゃない涙で、「あぁ、俺はまだ歌えてるな」とかいろんなことを考えてたんじゃないかな。その日のライブの1曲目はSURFACEの「それじゃあバイバイ」で始めてるから、まだどこかで引きずってる自分もいたし、たくさんの人が集まってくれた嬉しさだけじゃないものもあって。
椎名慶治 – それじゃあバイバイ (MV)
奥:ライブのとき、お客さんって本当にめちゃくちゃいい顔をするじゃないですか。音楽で人はこんなにいい顔になるのかと。
椎名:す〜ごいわかります。俺は泣き上戸なんで、1人でも泣いてる人を見るとつられちゃうんですよ。だから申し訳ないけど、「この曲は絶対にみんな泣いてるだろうな」と思うときは、お客さんの顔をなるべく見ないようにしていて。だって見たら泣いちゃうから。それぐらいみんな素敵ですよ。
奥:椎名さんはソロ活動に関しては、“楽しむこと”にめちゃくちゃ注力してるなと思いました。バンドのメンバーにもそういう空気を出して、自分の周りにいる人に楽しんでもらいたいというサービス精神というか。
椎名:人生って笑えることが少なくなっていくから、カッコいいところを見せるより、みんなが笑顔になれることを俺はやりたくて。でも難しいね。人を笑顔にさせるのってこんなに大変なんだなと、今改めて感じてます。だからこそ、お客さんを楽しませるためには、俺から始まって、メンバーも楽しんで、スタッフにうつって、そのいいノリが出て初めてお客さんを楽しませる空気を作っていけるかなと。
奥:このBlu-rayにはTAKUYA(ex.JUDY AND MARY・Gt)さんや高橋まこと(ex.BOØWY・Dr)さんとの豪華共演も収録されていますが、高橋まことさんが参加した「RABBIT-MAN」では、歌い出し1小節で即マイクを客席に振っていて。こんなにお客さんに歌わせるのが早いアーティストってこの世にいるのかなと(笑)。
椎名:アハハハハ!(笑)
奥:この手の技は無観客ライブだとできないから、お客さんにしょっちゅう歌わせて楽をしてきたアーティストは今しんどいだろうなと思って(笑)。
椎名:そういうことはいっぱいある。もう本当に助けられてたんだなと思った(笑)。
椎名慶治/RABBIT-MAN HD
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