2020年4月末、新型コロナウィルスの影響で惜しまれつつ閉店した札幌のライブハウス「COLONY」。その「COLONY」の元スタッフが、多くのアーティスト、関係者、音楽ファンからの励ましの声を受け、ライブハウスの存在意義を見つめなおし、改めてゼロからライブハウスを立ち上げるためのプロジェクトをWIZYでスタートさせた(https://wizy.jp/project/508/)。オープン以来店長を務めてきた小野寺司典氏に山口一郎率いるNF、Rihwa、tacicaら70組以上が協力するプロジェクトについて、また、新ライブハウス開店へ向けた想いを聞いた。

 

 

 

みなさんの声が励みになったし、「だったらやってみようかな」という前向きな気持ちにもなれました

 

 

 

――現在、WIZYにて「元COLONYのスタッフがゼロから立ち上げる新ライブハウス開店プロジェクト」が展開中。みなさんの想いや期待も実感していると思いますが?

 

本当にありがたいですね。発表後、北海道内のラジオやテレビ、新聞にも出させてもらってプロジェクトの説明をさせてもらっているんですが。それを見て支援して下さる方やTwitterで応援して下さる方も多くいて。実は、新型コロナの感染が収束しないうちに新しいライブハウスの立ち上げを表明することに対して、「もうライブハウスはいらないんじゃないか」といった辛辣な意見もあるんじゃないかと思っていたんです。実際にはそういった声はほとんど無くて、逆に「こんなに応援してもらって良いのかな」というくらい応援していただいています。

 

――COLONYの閉店が決まった後、「もうライブハウスはやらない」とご家族に告げた時期もあったそうですね。

 

はい。COLONYの閉店が決まったのが、全国の緊急事態宣言が出る前の4月上旬だったんです。北海道は3月から独自に緊急事態宣言が出されていて、ライブやコンサートが出来ない状態で、全国で緊急事態宣言が出されたらと考えると、その後もライブハウスを続けていくということが全く想像出来なかったんです。

 

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――19年やってきたCOLONYを閉店するのも断腸の想いだったと思いますが。

 

閉店は経営陣一同で決定したので、どうしようもないという状況でした。例えば4ヶ月後に確実に再開出来るとわかっていれば、なんとかしようとも思えたんですが、先が全く見えない状況だったので……。その時点でCOLONYは来年までの百何十という公演が決まっていたので、全ての公演を中止や延期にせざるを得なかったんです。振り替えや払い戻しもしなきゃいけなかったり、多くの方にご迷惑をかけての閉店になってしまったのも心苦しかったです。

 

――閉店を発表した時は、すごく反響がありましたね。

 

そうですね、ニュースとして大きく取り上げられたのは想像以上でした。閉店というニュースが出たことでいろいろな方からお電話をいただいたり、LINEやDMで連絡をいただいたし、閉店を惜しむコメントをTweetしてくれた方もたくさんいて。僕自身はそれがすごい励みになりました。よくミュージシャンが「ファンの声援が励みになります」と言いますが、裏方の僕は「ホントかな?」という気持ちもあったんですが(笑)、実際、みなさんの声が励みになったし、「だったらやってみようかな」という前向きな気持ちにもなれました。わざわざ電話やTweetをしてくれたことに、僕が思う以上にCOLONYのことを想ってくれているのを感じて。多くの人の声というより、一人ひとりの想いを強く感じたことが大きかったです。

 

――小野寺さんがプロジェクトページに“ライブハウスの存在意義”を書かれていて、「学校や職場では自分を表現できない人たちが出演者になったり、お客さんとなってライブハウスには集っています。息苦しい世の中でも「ライブハウス」だけは自分を肯定できる。そんな場所をもう一度しっかりと築いていきたいと思っています」という言葉にハッとしました。

 

19年前にCOLONYを立ち上げた時、出演者は学校祭でバンドをやってたような子が多くて。学校の人気者がバンドを始めて、友達をたくさん呼んでライブするみたいな感じだったんです。ここ数年はバンドやってる子たちって、決して、学校の人気者って感じではないんですよね。お客さんも、学校や職場では同じ趣味を共有出来る友達が少なくて、ネットで音楽を聴きまくってる中で見つけた、自分の好きなアーティストが北海道に来ることを何ヶ月も前から楽しみにしてるような子がいて。そんな子たちが集える場所を失くしてしまったことをすごく後悔したんです。

 

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――「ライブハウスを必要としている人は少数かもしれません。多くの人には必要のない存在かもしれない、それでもその少数の人たちのために私たちは全力で挑みたいと思っています」とも書かれていますね。

 

COLONYは200人くらいしか入らないので、何万人を動員するコンサート会場とも在り方が違って。本当にマイノリティのための場所だし、多くの人に「ライブハウスなんているの?」って言われるのも理解してます。全人口の99%の人には必要ないことは分かっているんだけど、僕らは必要としてくれる残りの1%の人のためにライブハウスをやっているんだなと。今回閉店して、それを改めて実感した感はありましたね。

 

PLANT

 

――そして、現在、「PLANT」と名付けた新しいライブハウスの開店に向けて動き出しているわけですが。ライブハウスの場所など、具体的な話はこれからなんですよね?

 

まだ何も決まってなくて、COLONYと同じくらいのキャパシティで場所を探している段階です。「COLONYのDNAを引き継いで」という言い方をしてるんですけど、僕以外のCOLONYの従業員も一緒に動いてくれています。僕はライブハウスって場所や機材だけじゃなくて、スタッフこそが命だと思っているんです。COLONYで働いてくれていた人たちがいれば、また同じようなライブハウスが出来ると思ってるので、人と音楽を愛するスタッフたちと一緒に新しい居場所を作っている最中です。

 

――アーティストにとって、COLONYはどんな存在だったと思いますか?

 

COLONYが出来る前は札幌のライブハウスに“ブッキングシステム”というのがほとんど無かったんです。ブッキングシステムでやることで、出演バンドと密接に関わることが出来たし、バンドのツアーやデビューのお手伝いも出来るようになって。出演してくれているバンドも、お客さんというよりは、バンドが困った時には助けてあげたり、お互いの信頼関係はあったと思います。“人を大事にする”という変わらぬ理念に共感してくれる人たちが今も残ってると思うし、今回もそんな皆さんが協力してくれたんだと思います。

 

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――今回のプロジェクトでは、地元・北海道のバンドはもちろん、全国のツアーバンドが協力してくれて、そこからもCOLONYとバンドマンの信頼関係が伺えます。

 

嬉しいですよね。THE NINTH APOLLOチームはレーベル単位でコラボしてくれて、COLONYに出演したことあるハルカミライやHump Backも協力してくれて。付き合いとしては最近なんですけど、気持ちが伝わっていたのは嬉しかったです。

 

――山口一郎(サカナクション/NF)さんの協力も心強いです。

 

一郎は前のバンド(ダッチマン)の頃からCOLONYに出ていて、開店以来19年くらいの付き合いになるんです。当時はTHEイナズマ戦隊とダッチマンがすごく人気で、一緒にやっていたりして。「ウチにも出てよ」とお願いしたのが最初の出会いで、オープニングイベントにも出演してもらったんです。

 

――閉店が決まって、山口一郎さんとインスタライブで対談されたんですよね?

 

一郎がインスタライブを使って、ファンの子と会話をしたりしていたんですが。「閉店の夜、関係者への報告も兼ねて閉店の経緯を対談形式で語りませんか」ということで、対談しました。関係者の人もたくさん見てくれたし、COLONYを知らない人にもたくさん知ってもらうことが出来て、すごく感謝しています。

 

 

 

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