毎年、数々の熱いライブとドラマが繰り広げられる関西最大の十代才能発掘プロジェクト「十代白書」。大阪「BIGCAT」「LIVE SQUARE 2ndLINE」他のライブハウスを運営するアームエンタープライズが、バンドを始めるきっかけ、オリジナル曲を作るきっかけ、ライブをしたいと思えるきっかけになればと始めた本大会は、今年11回目を迎える。決勝大会は3月29日(月)に大阪・BIGCATで開催され、グランプリを受賞したアーティストは、インディーズCDデビューと『KANSAI LOVERS』出演が決定となる。今回、WIZYで配信視聴権や決勝大会の独占CD販売など、さまざまな試みを実施するプロジェクトも開始している(https://wizy.jp/project/562/)。コロナ禍での開催となった今大会、開催することへの悩み、本大会の出演者への期待や魅力などを主催者のヘッドライン岸本氏に、また、前回のグランプリアーティストであり、このステージが大きなきっかけにつながったというasmiにも話を聞いた。
『十代白書』はアーティスト同士やお客さんと出会うとか、ライブハウスと出会うとか、そういう場が作れればいいな
――10代のアマチュア・ミュージシャンを対象とした、十代才能発掘プロジェクト『十代白書 2021』ですが、11回目となる今年も決勝進出者が出揃いましたね。
岸本優二:今年はコロナの影響で、開催出来るかどうかという問題があって。前回も予選までは順調に行なわれていたんですけど、3月29日(月)にBIGCATで開催する決勝大会が無観客での配信ライブという形になってしまいました※。今年もお客さんの安全を考えて無観客にする方が良いのではという話になって、予選会は無観客で開催したりしながら。なんとか決勝大会もやれることになりました。
※編集部注:大阪府の「緊急事態宣言」の2月末での解除を受けて、「十代白書2021」決勝大会」チケットの予約受付を開始。定員に達し次第終了となる。詳細は「十代白書2021」Twitter(https://twitter.com/jyu_dai_hakusyo)をチェックしてください。
――この状況だから仕方ないですけど、やっぱり有観客で開催したいですよね。
岸本:そうですね。僕もライブハウスの人間なので、生で空気を感じてもらうのが大事やし、伝える方法としては一番大事だと思ってるんですけど。コロナ禍ということも含めて、配信も大事なツールだと思っています。『十代白書』は20代になったら出られない大会ですし、asmiも今年20歳になるので、去年までしか出るタイミングはなかったし、そういう子もたくさんおるやろうなと思ったら、参加組数は減ってしまうかも知れないけど、どうしても開催したいなと思って、出演者を募集しました。毎年、100組以上の応募があるんですけど、今年も70~80組の応募がありました。
――思うようにライブや練習も出来ない中、なかなかの応募数ですね。
岸本:そうですね。出場したいと言ってくれる人がたくさんいてくれたのは嬉しかったですし、より、やらなきゃいけないなという気持ちにもなりました。『十代白書』はアーティスト同士やお客さんと出会うとか、ライブハウスと出会うとか、そういう場が作れればいいなと思っているので。今年もその場が提供できたことは、すごく良かったです。
――学園祭もできず、ライブもできない状況で『十代白書』という目標がひとつあると、それだけでモチベーションになりますしね。
岸本:そうですね。今年から“アコースティック部門”を作りまして。予選は、本当は1日だけの予定だったんですけど、応募が多くて2日間になったんです。アコギかエレキかなと思ったら、PC鳴らしてラップをやってる子がいたり。10年前はなかったことなので、一人で音楽を作れる時代になってきてるんやなと思いました。過去に一人で優勝したのは昨年のasmiだけで、これはasmiの影響かな?と思ったり(笑)。
――asmiさんは去年のグランプリを経て、今年はゲスト参加になります。
asmi:私は2017年頃の大会から、『十代白書』を観客として見に行っていたので。自分が優勝したこともいまだに不思議なんです。なので、ゲストアーティストとして出演できることは本当に嬉しいですし、誇らしいです。
asmi「osanpo」
――去年の決勝大会は無観客で配信という開催になったんですよね?
asmi:はい。決勝はBIGCATで行なわれたんですが、お客さんがいなくてポカーンとした中でライブをやって。仕方ないですけど、お客さんに見てほしかった気持ちもありました。
――いつかワンマンでBIGCATを埋めましょうよ!
asmi:そうですね(笑)、いつか出来るように頑張ります!
――岸本さん。改めてですが、『十代白書』はどんなイベントなんでしょうか?
岸本:自分たちの会社「ヘッドライン」は、グループで関西8店のライブハウスを経営しているのですが。「若い子たちの入り口を作る」ということをひとつ大きなテーマに掲げて、十代の子たちがどうやってライブハウスに出会っていくのか? ということを各ライブハウスが考えているんです。今はネットを使っていろいろな形で発信することもできるんですけど、やはりライブハウスと出会って、しっかり繋がってほしいなという気持ちが強くあります。友達がライブハウスでライブをやっているのを見る、というのが僕らにとっても初めてのライブハウス体験だったので、友達の応援に行くことで『十代白書』がライブハウスの敷居を下げることができればと、そのキッカケとして十代を対象としたこの大会を始めました。
――『十代白書』は今年で10年目になりますが、始めた頃は10年続くと思っていましたか?
岸本:「今年もやろか?」「来年もやろうや」っていうのがずっと続いているだけで、気がついたら10年経っていたという感じですね(笑)。参加してくれる人がいなければ開催できないし、協力してくれてるチームも必要やし、誰一人欠けてもここまで続かなかったと思います。合格して喜んでくれる人がいたり、合格できなくて本当に悔しくて泣いてる人がいたり…。お客さんや友達、家族とその気持ちを共有していたりするのを見ると、僕たちは勝手に先生や親戚のおっちゃんになったような気分になって(笑)。そういう風景を見ると「来年もやろう」と思います。決勝に行けなかった人がまたライブハウスで頑張っている姿を見たりと『十代白書』をやってて良かったと思うことはすごく多いですね。ずっと僕が担当していくかはわからないですが、新しいスタッフに入ってもらったりしながら、これからも長く続けていければと思っています。
――泣いてる子に「来年頑張れよ!」と言ったら、来年も開催する責任がありますしね(笑)。
岸本:そうですね(笑)。あと『十代白書』では、良い音楽に出会ってほしいという気持ちも強くて。大会という形ではありますが、続いていく中で“良い音楽を伝え、共有する”という主旨に変わってきているように感じています。「優勝したい!」というだけでなく、「良い音楽を伝えたい」という気持ちでやってる人が良い結果を出しているような気もしています。asmiなんて特にそうで、前回、ほんわかしたライブをやって、その世界観をみんなが支持してくれたように思うんです。去年は配信でしたけど、asmiの良い音楽と会場の空気を変えたあのステージが、画面を通じても伝わったんだと思っています。ただ、配信には生と違う空気感があったと思うし、去年はまだ僕らも配信ライブを始めたばかりの頃だったから、あの時は配信の空気感もよく分からなかったですね。
asmi:そうですね。今やったら配信ライブにも慣れて、カメラに向かってしゃべることができるんですけど。あの時は私も配信が初めてだったので、すごく難しかったです。ライブハウスだったらお客さんの顔も見えて雰囲気もわかるんですが。でも、私の場合はお客さんがいた方が緊張したんで、カメラの前の方が得意だったかも知れません(笑)。たぶん無理やろなと思っていたので、あんまり気ばらず、自分らしくやっていこうと思ったので、(グランプリは)嬉しかったです。
――asmiさんはお客さんとして『十代白書』を見に行った時、「いつか出てみたい」って気持ちはあったんですか?
asmi:最初はなかったです。一人でasmiって名前で活動し始めたのが2017年の夏前で、自分に自信がないので結果が出るのが怖くて、あまり出ようと思わなくて。それが、いつの間にか出演していたという感じです(笑)。
――お客さんとしてと出演者としてでは『十代白書』の見え方も違いましたか?
asmi:見ていた時は先輩ばかりだったので、ただ「カッコいいな」と思って見ていましたが、出演者の立場になったら、「出たからには勝ちたいな」という気持ちになってきたので、『十代白書』を通じて少し大きくなれた気がします。ライブハウスの方たちも応援してくれている大会なので、出演したことでライブハウスの方ともたくさん繋がれたし、すごく大きなキッカケになりました。出演したら、みんなにとっても大きなキッカケになれる大会だと思います。
earth meal feat.asmi – Rin音(Official Music Video)
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