2020年12月23日(水)に2ndミニアルバム『メイクアップ』をリリースする降幡 愛。声優としての活動はさることながら、アーティストとしても着実に、ものすごいスピードでキャリアを積み上げていく彼女。今、話題の80’sサウンドを全面に押し出し、本間昭光がプロデュースする彼女の楽曲には注目が集まる。そこで今回、アルバムの話題を中心に降幡 愛にインタビュー。アーティスト・降幡 愛が作品に込めた想いや制作過程、彼女と80’sサウンドの出会いとは。たっぷり語ってもらったので、最後まで読んでほしい。

 

 

 

艶っぽく、降幡 愛らしく歌えるようになってきて、歌での成長というものもだんだん出てきたのかな

 

 

 

ーー2ndミニアルバム『メイクアップ』は、今年9月発売のデビューミニアルバム『Moonrise』でのアーティストデビューからなんと3ヵ月というスパンでのリリースとなりましたね。

 

私もけっこう衝撃で(笑)。曲自体はデビューしてからどんどん制作していこうという方針ではあったんですけど、自分的には予想よりちょっと早めにリリースできたという感じです。リード曲の「パープルアイシャドウ」は雨の曲で、来年の6月ぐらいに出すかなって思っていたのですが、今回はとにかくみなさんにどんどん届けようと思って。

 

ーー本作も前作同様、本間昭光さんとのタッグによる制作となりました。

 

タッグと呼んでいただくのも恐縮しちゃうぐらい、本間昭光大先生と一緒に制作しているだけでも贅沢な時間なんですけど、やりたいことをやらせていただけています。本間さんとも頻繁に連絡を取り合っていて、「こういう音楽が好きだ」「こういうことやりたいな」というのを常にディスカッションできています。レコーディングのときも本間さん自身も楽しんでくださっていて、ずっとニコニコされていて(笑)。

 

ーーそんな現場で制作された『メイクアップ』ですが、完成した手応えはいかがですか?

 

ある意味でバリエーションが出た6曲だなと思います。『Moonrise』は女性目線で歌った曲が多かったんですけど、今回は男性目線や『Moonrise』に入っている曲のアンサーソングも入っているので、『メイクアップ』から入った方も遡って『Moonrise』も聴いていただけると、両方楽しめるのかなと思いながら制作していました。

 

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12月23日リリース2ndミニアルバム『メイクアップ』【初回限定盤】のジャケット写真

 
ーー前作も80’sサウンドにフィットしたボーカルを聴かせていましたが、本作はよりそれを押し進めた、降幡さんのボーカルが魅力的に聴ける仕上がりになったと感じます。
 

ありがとうございます!自分でもやっと「私の歌になってきたな」っていう気がします。それまでアニメ作品の役として歌うことが多かったぶん、『Moonrise』の頃はまだ自分の歌というものがよくわからない状態から入ったんですよね。そこからアーティストとしての自分の歌声を模索していったのが『Moonrise』なんです。それに比べて『メイクアップ』はやっと艶っぽく、降幡 愛らしく歌えるようになってきて、歌での成長というものもだんだん出てきたのかなって。

 

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12月23日リリース2ndミニアルバム『メイクアップ』【通常盤】のジャケット写真

 

ーーリードトラックの「パープルアイシャドウ」はそうした降幡さんの成長も感じられる一曲になりましたね。

 

『メイクアップ』は、当時ハマっていたアーティストさんのテイストをよく入れているんですけど、制作時に亜蘭知子さんというアーティストさんにハマっていて。『浮遊空間』というアルバムの「I’’m In Love」のベースラインがすごくかっこいいんですよ。そこから「ちょっとしっとりめのサウンドで、雨の歌がハマるんじゃないかな」って本間さんに話して、そのとき歌詞もお渡ししたんですね。

 

ーー今回も降幡さんの歌詞から楽曲を作るという詞先の方式で制作していったそうですが、「パープルアイシャドウ」は降幡さんがまず雨のイメージで作られたと。

 

ただ、残念ながら私は雨が嫌いなんですけどね(笑)。そこからちょっとしっとりしたイメージで、女の人っていろんなことを考えているよねっていうことを想いながら書きました。言い訳ばかりしているような、要はずるい女の歌なんですね。サウンドを聴くとかっこいいし当時っぽいんですけど、歌詞も含めて聴いていただくとその心情などを妄想しやすい、いろいろ受け取ってもらえるような曲になったかなと思います。

 

ーーちなみに歌詞はどのように考えられるのですか?

 

基本的には物語ベースで考えています。あとは、思いついたフレーズからもストーリーを考えていくんですけど、「パープルアイシャドウ」は”いい女になんてなれない”というフレーズがまず思いついて、曇り空をブラインド越しに見て眉をひそめるというトレンディドラマの登場人物みたいなイメージを思い描きながら書きました。

 

ーー基本的には降幡さんの頭の中にあるストーリーを歌詞に起こしていくような作業になるんですね。

 

小さい頃から、妄想しながら漫画を描いていたので、その延長線上で作っていますね。それでいうと、ドロドロした昼ドラとかも好きなんです(笑)。あと、スタッフさんや友だちの恋愛の話を聞いていると「それドラマっぽいね!」っていうのがあって、そこからも着想を得たりしますね。

 

ーーそうした降幡さんの描いたイメージを汲み取って、本間さんがサウンドにしていくわけですね。

 

本間さんは自分にないところを拾ってくださるというか。はじめにサウンドを打ち込んだだけのものをいただくんですけど、その後にアレンジ後のものもいただくと全然違う色が出ていて、いつも感動しています。自分のふんわりしたニュアンスを形にしてくれる、本当に天才だな~っていつも思いますね。トラックダウンのときにもエンジニアの山内(”Dr.”隆義)さんという方がいらっしゃるんですけど、そこでもとにかく「80’sっぽく」というのを本間さんと話されていて、私も「もっとこうしてほしいです」って生意気ながら言わせていただいたり。

ーーこのほかにも本作には魅力的な楽曲がたくさんあります。続いては年下の男の子の目線で描いた「RUMIKO」です。

 

これは「パープルアイシャドウ」のアンサーソングなんですよ。「パープルアイシャドウ」の主人公は濡れたアイシャドウを隠している女性なんですが、ここでも同じアイシャドウの女性が登場します。その女の人を好きな男の子の物語ですね。

 

ーーとなると「パープルアイシャドウ」の主人公はルミコなんですね。

 

そうなんです、この人はルミコさんなんですよ(笑)。そこで「止められない」「アイラブユー」「誘ってるよね」っていう、トレンディドラマのようなクサいセリフをあえて入れていこうかなって。カラオケとか男性が歌ったらちょっと面白いかもって思いつつ作ってみました(笑)。

 

ーー「RUMIKO」でも多国籍なフレーズが登場したサウンドが興味深いですが、続く「桃源郷白書」は中華風サウンドに仕上がりました。

 

今回はサウンドにバリエーションがあって、「桃源郷白書」はチャイニーズっぽいサウンドというので作りました。二胡の音が入っていますが、これは実際に演奏してもらって、私も収録現場を見学させていただきました。あとこの曲は私もパーカッションで参加しています。パーカッションというほどのものではないかもなんですけど、イントロとアウトロのキラキラキラーっていう音をマイク前でやって。そういうのを本間さんが思いつきでやってみようってなるんですけど、やっていて本当に楽しいです。

 

ーーそしてアッパーな「SIDE B」では、降幡さんの激しい歌唱も聴けます。

 

歌っていて楽しかったです。歌詞に出てくる登場人物として歌っているというのが私のスタンスにあって、自分で作った物語の主人公になった気分で、悲痛な叫びという感じで歌いました。これは『Moonrise』に収録された「Yの悲劇」のアンサーソングで、あの曲で嫌がらせをしていた女の話という、「Yの悲劇」のB面(SIDE B)という意味ですね。私は声優としてもそうなんですけど、漫画やドラマでもそのバックボーンを考えがちで、そういう作品の番外編みたいなものを描いてみました。

 

ーー続いてはセンティメンタルなメロディの「ルバートには気をつけて!」。

 

よく現場で本間さんやギターの林部(直樹。米米CLUB)さんに音楽用語を教えてもらうんですけど、そのなかに「テンポ・ルバート」というのがあって、調べたらテンポの強弱をつけるっていう意味で。人生ってうまくいかないことの連続で、それをルバートの強弱というもので表現したいなと思って作った楽曲なんです。あと音楽用語をタイトルに入れたい、というのもあったんですけどね(笑)。

 

ーーこの曲でも印象に残ったのですが、サビの「シネマティック・リアル」など英語の発音をあえてカタカナ英語で読むのも80’sアイドル的だなと。

 

本間さんからディレクションいただくときによく言われます。この次の「真冬のシアーマインド」も、レコーディングのときに「スリーツーワン!」を「スリートゥーワン」って歌っていたのが、「ツーのほうがいいな」って言われて。

 

ーーその本編最後となる「真冬のシアーマインド」は、本作のなかでもポップな仕上がりになりましたね。

 

ほかの楽曲に比べてサウンドも歌詞も軽やかで、アイドルソングみたいな印象はありますよね。冬の定番ソングというのをこのプロジェクトでも作りたくて書いたんですが、一見かわいらしくてピュアな感じの歌詞に見えて、私のなかではちょっとサークルのお遊び女の話というイメージで書いていて。

 

ーーなるほど、だから「アブナイ冬へ」という(笑)。

 

そうそう(笑)。これも詞を書いて送ったら、本間さんが「パッとサウンドが思いついた」って言ってくださってうれしかったですね。いろんな歌詞をお渡ししたなかで、頭の中で楽曲が出来上がったと言ってくださったのがこの曲で。

 

ーーこうして前作に続いて80’sなアプローチを重ねた本作もまた素晴らしい一作になりました。また楽曲以外でもアートワーク、そして「パープルアイシャドウ」のMVなど、こちらも80’sに寄せた作りになっています。MVは降幡さんの出演しないドラマのパートもありましたが、このドラマも降幡さんのアイディアから?

 

MVを撮ってくださった監督さんとお話しする機会があって、そこで私の歌詞のイメージやそのなかの物語をお伝えして、それを汲み取って作っていただきました。

 

 
 
降幡 愛「パープルアイシャドウ」Music Video
 
 

ーー完成した映像をご覧になった感想はいかがでしたか?

 

「あっ、すっごいトレンディドラマ!」って思いました(笑)。レインボーブリッジから夕焼けが射したところなんて「東京ラブストーリー」なんじゃないかってぐらいで。本当に画も綺麗で、画像の縦横比が4:3になったり、映像の質感も当時っぽくて素敵です。

 

ーーところどころに出てくるアイテムもレトロな質感ですよね。男性の履いているジーンズが……。

 

ケミカルなんですよね(笑)。靴もコンバースで。そこもスタイリストさんがこだわって揃えてくださって。あと肩パッドが入ったダブルのスーツとかひさびさに見たなって(笑)。

 

ーーそして降幡さんの歌唱シーンもまた印象的なダンスを披露されています。

 

Winkっぽい(笑)。

 

ーーまさにWinkを思わせる手振りのダンスが素敵でした。

 

これも実際に監督と打ち合わせしたときに「手振り多めがいいです」って話になりました。ダンスの先生にも振り付けをつけていただいたんですけど、サビの部分は自分で考えました。

 

ーー音の現場だけではなく、まさにスタッフ全体で降幡さんのやりたいアプローチを実現していくいい空気が流れているわけですね。

 

いい空気しか流れていない(笑)。でも本当にすごいです。この半年ぐらいでいろいろ経験させていただきましたが、どれもひとりじゃできないことだし、それをみなさんが楽しんでくださっているのが私もうれしいですね。大人の遊びっていう感じです(笑)。

 

 

 

 

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