11月24日(火)に3rdアルバム『HiKiKoMoRi』をリリースした藤川千愛。アニメ・ドラマ主題歌もてがけ、2020年注目アーティストとして人気が高まる彼女に、リリースを記念してインタビューを実施。本アルバムに込めた想いについてはもちろんのこと、彼女の素顔に迫る質問をいくつか投げかけてみた。楽曲に向き合う姿勢と、人間・藤川千愛の魅力溢れるインタビューとなっているので、是非チェックしてほしい。
誰かと同じように聴こえたら、存在意義もなくなってしまうし、特徴的と言っていただけるとすごく嬉しい
――藤川さんが音楽を始めたきっかけを教えて下さい。
幼少時、気が付いた時には歌手になると宣言していました。演歌歌手だった祖父や、音楽好きな家族の影響があったのかもしれません。
――今までどんな楽曲に影響を受けてきましたか?楽曲のルーツになっているアーティストや楽曲と、それに関するエピソードを教えて下さい。
祖父が演歌歌手でしたが、私自身が演歌を唄ったり聴いたりすることは特になかったので、それがルーツということはありません。
むしろ音楽については雑食で、田舎育ちだったので、子供の頃は情報がそれほど多くなくて、TVから流れてくる曲や流行っている曲を聴いていました。強いてあげるならば、母親が車で80年代の曲を良く流していたので、懐メロにはちょっと詳しいかも(笑)。
他のアーティストさんみたいに洋楽に影響されたって格好良い話が出来ればいいのですが、そういうのはないんですよ。新しいアルバムじゃなく、2ndアルバムの話になっちゃいますが、もしも洋楽を教えてくれるような家族がいたらな、って憧れを歌った曲(※「私にもそんな兄貴が」)もあるくらいです 。
――作詞される時に意識されること、また、インスピレーションを感じるものは何ですか?
タイアップ曲以外は、自由に書かせてもらっているので、基本はその時その時で感じたことや伝えたいことを書いています。閃いた時にスマホにメモを取ったり、書くぞ、って決めて机に向かったり、いろいろです。割合でいうと、歌詞は私自身の実体験が2、想像ごとの物語が8って割合ですかね。
――特徴的で唯一無二な声で魅了されますが、ご自分の声をどう思われますか?
誰かと同じように聴こえたら、存在意義もなくなってしまうし、特徴的と言っていただけるとすごく嬉しいです。でも、ないものねだりで、もっとハスキーだったらな…とか思うこともありました。GLIM SPANKYのレミさんとか、どうやってあんな声を出しているんだろうとか思います。今は自分らしい声とラインを追求しています。
――『HiKiKoMoRi』というタイトルはコロナ禍の中で部屋に引き籠ることで生まれた作品であることから名付けられたとのことですが、コロナ禍で曲作りには変化が出ましたか?
歌詞が明るくなりました。本来、明るい曲が苦手で、どちらかと言えばネガティブな自分を正直にさらけ出すような曲が好きなんです。思い返すと、私自身がそういう曲のほうが共感できたから。
それが、コロナになって先の見えない抗えない絶望を味わうことで、歌詞に希望だとかポジティブなものが増えだしました。
自分ではどうすることも出来ない絶望に包まれると、明るい曲を欲するんだなって。
そんなことにも気付けた一年でした。
――アルバム『HiKiKoMoRi』の聴きどころやこだわりポイントをご紹介いただけますか?
私はアルバムにコンセプトを設けていなくて、一曲一曲すべてシングル曲と思って作っているので聴きどころは正直全部です。
あえて、何かポイントを言うのであれば、アルバム一曲目の「私に似ていない彼女」は元カレとその新しい彼女をボロクソに言うのですが、アルバム最後の曲(銀杏BOYZの「援助交際」)では、「彼女が淫乱なんて嘘さ」って、男性は好きな人の噂を否定しているんです。この対比っていうか、女性は現実的で、男性はロマンチストなんだなって気付いたり…。
あとは気が付いた人がどれだけいるか分かりませんが、「援助交際」のアウトロは、2ndアルバムの一曲目の「東京」のイントロをアレンジしたものだったり、CDを聴いて、そのままBlu-rayを観た人が「おやっ!」ってなればと思い、遊び心も入れています。
5分で聴く藤川千愛3rd Full Album『HiKiKoMoRi』全曲フラッシュ
――「四畳半戦争」というタイトル、そして「四畳半」「四畳半ばかしの見聞に」などという言葉選びがとても印象的でした。この言葉が誕生したきっかけなどがありましたら教えてください。
自分の意見を押し付けてくる人、自分の意見がすべてと勘違いしている人、その人の言葉がどれだけ誰かの道を閉ざしているかと考えたら怒りも沸いて、そんな考えがどれだけちっぽけで独りよがりだってことを、生々しく感じてもらえるような表現を考えていたら「四畳半」って言葉に辿り着きました。
――「ありのままで」はドラマ「科捜研の女」の主題歌となりましたね。主題歌が決まった時の心境と、実際に曲が流れてみた感想を教えてください。
それはもちろん嬉しかったですよ。私の実家は岡山の田舎で、例えばZeppツアーが決まったっていってもイマイチピンとこないような田舎なんですよ。だから、お年寄りから子供まで皆が知っているようなドラマ、「科捜研の女」の主題歌が決まった時のお母さんの喜びようったら、すごかったです。放送を観たときは「泣いた」ってLINEが来たくらいです(笑)。ちょっとした親孝行ができました。そういう理由もあって、私は格好つけずに、「Mステに出たい!紅白に出たい!売れたい!」って日頃から口にします。歌手であるからには、たくさんの人に歌を届けたいって気持ちが私の根本にあるんですよ。
ありのままで/藤川千愛(ドラマ『科捜研の女』主題歌)
――TVアニメ「無能なナナ 」エンディングテーマの「バケモノと呼ばれて」は、アニメのために書き下ろされたそうですが、「世界を許してみようかな」「放っておいてくれないか」という気持ちの葛藤のようなものを感じました。作詞される際にこだわったポイントがありましたら教えてください。
これは原作を読み込んで書きました。ネタバレになってしまうからどこまで話してよいか分かりませんが、指摘していただいたポイントは主人公の葛藤に迫るというところです。
それらを踏まえて、現実世界でも能力のある人はある人で羨まれたり、それを維持するために努力したり、能力のない人は妬んだり、あるいは能力を得ようと悩んだり、いずれにせよそれぞれの立場で葛藤するものだと思ったので、原作と現実のそれぞれの葛藤がリンク出来たらな、っていう想いで書きました。
バケモノと呼ばれて/藤川千愛(TVアニメ『無能なナナ』EDテーマ)
――レコーディングの際に苦労したこと、制作エピソードがありましたら教えてください。
ときどき、私の性格上、「もっと出来るんじゃないか」って悩むことはありますが、レコーディングは大好きなので、苦労はほとんどしていないです。
『HiKiKoMoRi』のアルバムからボイストレーナーの先生が変わり、歌う際のラインをより個性が出るラインに変えました。2ndアルバム『愛はヘッドフォンから』は格好良さを追求していたので、低いライン低いラインで歌っていて、その違いに気付いてもらえたら嬉しいですね。
それと、コーラスの部分もかなり時間をかけて大切に録ったので、そのあたりも違いが出ていると思います。
――11/23(祝)には2周年記念ライブをされましたね。ライブを終えてみていかがでしたか?また、デビューから2年を振り返ってみていかがですか?
コロナの第三波のニュースが連日報道されていたので、開催できるか、できても集客や着券率が悪いのかなって心配していたのですが、満員の会場にあたたかく迎えてもらえました。
ライブは『HiKiKoMoRi』の曲がメインながらも、事前に歌ってほしい曲のリクエストを募ったり、カバーコーナーやアニメコーナーのブロックを作るなど、2周年ということでいつもと違うセットリストの組み方をしました。きっと初めての人でも、藤川千愛はどんな歌手なのかが分かりやすかったんじゃないかなー、と自分では思っています。
それから、感染対策でお客さんは声が出せないので、MCが一方通行にならないように、お客さんのリアクションを代弁するような歓声や笑い、拍手のサンプラーを用意したり、歌だけでなく、ライブの臨場感を少しでも感じてもらえたらと思い、MCも遊んでみたんですが、まあまあ好評だったと思います。誕生日の6月6日にちなんで、冒頭の66分間だけYouTubeでも配信したのですが、担当したアニメのおかげか、コメント欄は世界中の言語でメッセージが届き、ありがたい限りで、良い2周年ライブになりました。
――では、来年の3周年までに達成したいことはありますか?
「誰も知らない」の歌詞じゃないですが、明日のこともどうなるか分からない毎日なので、今は胸に灯る炎を絶やさないように…したいですね。それから私の歌が、同じような気持ちを抱く人の燃料になればいいなって思います。格好つけちゃったので、願望だけでいいならば、それまでにMステに出ていたい、っていうのが本音です。そのためには、良い歌を届けなきゃですね。
――今後は初のZepp Tourを控えられているとのことですが(※12月の公演は延期)、意気込みと準備されていることを教えてください。
先日のアニバーサリーライブでは歌っていない新曲がまだ5曲かな?あるので、こちらも初披露します。つまるところ、3rdアルバムの曲は全曲歌います。
まだまだコロナが心配って人は多いかとは思うのですが、感染対策をしつこいほどやって、皆さまをお迎えしますので、心配せずに、是非遊びに来ていただけたら嬉しいです。
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