「自分が考えていることしか出せないので、取り繕った曲は作れないんです」
――それにしても、この3枚のEPだけでもまったく違う曲を届けてきてくれていますが、楽曲制作で大事にしていることはどんなことでしょうか。
自分の気持ちに素直に作ることを大事にしています。基本的にこねくり回すことが得意じゃないんですよね。歌詞もメロディも、その場で浮かんだアイディアを大事にして作っています。
デビューEP「inside you」
――即興性を大事にしているということでしょうか。
はい。即興で作るからこそ、自分が考えていることしか出せないので、取り繕った曲は作れないんですよ。だからこそ、実際に出来上がった曲を聴いてみると、“私だな”と思えるんです。勢いもあるし、鮮度もその場で凝縮された曲ができるので、今はそう思っていなくても、その時に考えていたことが曲を通してわかるので、聴き返しても面白いですし、“自分ってこんなことを考えているんだ”ということがわかるので、これからも即興で作ることは大事にしていきたいですね。
――アートワークはとても神秘性に満ちたものが多いですが、どのように作られているのでしょうか。
毎回絵コンテや、完成イメージをみながら撮影をするんですが、いざカメラの前に立つと、カメラマンさんやスタッフさんにいろいろ引き出してもらえるので、最初に考えていたものとは全く違うものができるんです。“私ってこんな表情ができるんだ”という新しい発見にもなるので、プロのお仕事のすごさを体感しています。
milet「Runway」
――いま、お話を聞いていると、miletさんはいたずら心が旺盛だったり、伝えるのが照れ臭いようなところがあるのかなと思うのですが…。
その通りです(笑)。自分の性格的に譲りたくないところが多いんですよ。特に音楽は“このコードは私らしくない”という音があるので、制作中にズバッと言葉にしてしまうんです。でも、ふと家に帰った時に、「ちょっと言い過ぎたかな」とか「傷ついてないかな」と思い、「さっきは言い過ぎてごめんなさい」と連絡をすることも(笑)。そこで「大丈夫だよ」と言われて、やっと安心できるんです。
――あはは。言ってはしまうものの、気になっちゃいますよね。
はい(笑)。でも、ちゃんと相手も私もオープンでいられるような関係でいたいなって思っています。
「プライベートでは、よくコンビニで30分くらい探索をしていますね(笑)」
――そんなmiletさんを作り上げてきたルーツを知りたいのですが、小さなころからシンガーソングライターを目指していたんですか?
いや、もともとはずっとフルートを習っていたので、オーケストラに入りたかったんです。でも、高3のときに勉強が楽しくなり、映画も大好きだったので、映画音楽を勉強できる大学に進学しました。でも、そこでずっと私を支えてくれていたフルートを手放すことにすごく悩んだんですが、気持ちを切り替えるためにフルートを手離し、映画音楽に集中することを決めました。その瞬間、一気に視野が広がって、今の自分が生まれたんです。
――なるほど、だからmiletさんの楽曲って、どこか映画の劇半のような雰囲気があるんですね。
そう感じてもらえるのが一番うれしいです。いつも頭の中でショートムービーを作ってからそれに合わせて音楽を作るので、劇半に近いものがあるのかもしれません。
――いつか、本当に劇半を手掛けるのを楽しみにしていますね。
やります! やれます!(笑)
――あはは。さて、話しているとミステリアスなイメージというよりも親しみやすい印象が強いですが、プライベートはどんなことをしているんですか?
う~ん…。よくコンビニで30分くらい探索をしていますね。
――ちょっと長めじゃないですか⁉
あはは。そうなんですよ。すべての棚をチェックして、その店がアイスに強いのかとか、割引の棚をみて、菓子パンが弱いのかとか調べています。細かいところの配置やほこりも気になっちゃうんですよ。
――コンビニの地域責任者みたいですね(笑)。
あはは! 好奇心が強いんですよ。でもあまりに滞在するから、不審に思われて店員さんに話しかけられることも多いんです(笑)。
――でしょうね(笑)。
はい(笑)。あとは、音楽のことはずっと考えていますね。ただ、音楽を聴かない日も大切にしています。目と耳から入ってくるものだけでなく、匂いや触った感触をしっかりと自分の中に記憶できるように隙間を開けるようにしています。
――その感覚が思いきり味わえそうなのが、今年の夏フェスになりますね。今年はROCK IN JAPAN FESとSUMMER SONICに出演が決まっていますが、どのようなステージになりそうですか?
私、アウェイが大好きなんですよ! 私を初めて見た人が、ポカーンとしている表情や、目を輝かせてくれる瞬間がすごく楽しいんです。私自身、夏フェスに参加するのも、出演するのも初めてなので、今からすごく楽しみにしています。
――そう思えるようになったのは、ワンマンライブを成功させた経験が大きいと思うのですが、マウントレーニアホールでのライブはいかがでしたか?
聴いてくださっている方のお顔が見えたことが一番の幸せでした。今まで、それがわからなかったからこそ、不安もあったんですよね。でも、やっと出会えた人たちに向かって歌える幸せを感じたし、なにより聴いてくれた人たちとの見えないコネクションを感じることができたんです。またすぐにでもライブがしたいなと思いました。

(milet SPECIAL SHOW CASE Vol.2 オフィシャル写真)
――ありがとうございました。では最後に、今後どんな曲を作っていきたいと考えていますか?
これからも柔軟性を大事に、ジャンルを問わず、いろんな曲を作っていきたいですね。さらに、アルバムを作るとしたら、『inside you』の前に私が作っていた曲も披露することができると思うので、より私のことを知ってもらえると思うんです。これからもみなさんとのコミュニケーションを大事に、歌い続けていきたいと思います。
文:吉田可奈
■レコチョク上半期ランキング
miletの受賞記念コメントも公開!
https://recochoku.jp/special/100797/
■miletセレクトプレイリスト
「My favorite song selected by milet」
dヒッツ:https://dhits.docomo.ne.jp/program/10019296
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milet
ハスキーかつ重厚感のある独特の唄声と、グローバルな存在感を放つソングライティングを兼ね揃え た女性シンガーソングライター・milet(ミレイ)。思春期をカナダで過ごし、現在は東京都内に在住。2018年より本格的に音楽活動をスタート。
2018年10月には、パリ、NY、ソウル、東京をはじめ世界各国で開催されたイヴ・サンローランのグローバルイベント「YSL BEAUTY HOTEL」にイヴ・サンローラン・ボーテがピックアップするアップカミングなアーティストとして出演。
2019年3月6日にメジャーデビュー。Toru(ONE OK ROCK)プロデュースによるデビュー曲「inside you」はiTunesなど人気音楽配信サイト11サイトで1位を記録。8月21日にはTVドラマ「偽装不倫」主題歌を収録した3rd EP『us』をリリースし、オリコンデジタルランキング初登場1位を記録したほか、AWA・Spotify・dヒッツ・LINE MUSICなど7つのサブスクサービスで1位を記録。
2019年末、人気音楽配信サイト”レコチョク”による「レコチョク年間ランキング2019」のダウンロード部門、ストリーミング部門の両方で新人アーティストランキング1位を記録。デビュー曲「inside you」は「東京ドラマアウォード 2019」主題歌賞を受賞した他、TOKYO FM「桑田佳祐 のやさしい夜遊び」年末恒例企画「桑田佳祐が選ぶ、2019年邦楽シングル・ベスト20」(2019年12月28日放送)にて1位に選出される。
2020年6月3日には1stフルアルバム『eyes』をリリースする。