ボカロPノラを中心に結成されたネット発の音楽ユニット・今夜、あの街から。通称ヨルマチと呼ばれる彼らは、毎作品ごとに女性ボーカリスト(レイラ)を迎え、ノラと共に歌い上げていくという、コンセプチュアルなユニットである。

2月18日(土)にリリースされた「クウフク(starring VALSHE)」はアニメ『名探偵コナン』の新エンディングテーマとなり、さらに注目が集まる中、「レコログ」ではノラにインタビューを行った。最新作に込めた想いはもちろん、ユニットとして活動することになった経緯や、彼の知られざる素顔にも迫ってみたので、ぜひ作品と合わせて楽しんでほしい。

 

 

自分が叫び続けた音楽を認めてもらえたような気がして、救われた気持ちです

 

──ノラさんが音楽活動を始めたきっかけや、影響を受けた楽曲・アーティストを教えてください。

 

UVERworld、YOASOBIのAyaseさんにだいぶ影響を受けてヨルマチのサウンドができている気がします。ボカロ音楽が好きなので、先輩ボカロPさん達の影響は強く受けていると思います。歌い手さんも好きで、まふまふさん、伊東歌詞太郎さん、しゅーずさんをよく聴いていました。

 

──今夜、あの街からの音楽活動を一言で表すと?その理由も教えてください。

 

「ショウニントウソウ」でしょうか。デビュー曲のタイトルなのですが、実はこの曲が先にできて、そこから着想を得てユニットを作りました。僕的には“承認逃走”であり、“承認闘争”でもあります。現状に納得できないからこその逃走、そして闘争。逃げることって実は戦う気持ちが心のどこかにあるからこその行動だと思っています。臆病なら現状維持を選択するはずですからね。理不尽に抗いながら、理想を追い求める、そんな音楽を演るユニットです。

 

♪今夜、あの街から『ショウニントウソウ』starring Enel;

 

 

──”閉塞感のある街や夜”が舞台となった、男女の物語が描かれていくというコンセプチュアルなアーティスト活動ですが、本テーマになったきっかけや、込めた想いをお聞かせください。

 

コロナ禍真っ只中に始めたユニットで、当時の窮屈な世界情勢は、無意識ながらもコンセプトの根底になっていた気がします。基本的にはそういった閉塞的な街から逃げ出し、華やかで自由な世界に向かって欲しいのですが、一方でネオンの明かりが不気味に光る夜の美しさ、みたいなものも表現できたらなと思っています。

 

──作品ごとに女性ボーカル(「レイラ役」)をゲストとして迎えるため、それぞれの作品ごとに印象が異なるのが印象的です。毎回ボーカルが異なるという形式でのアーティスト活動に踏み切ったきっかけを教えてください。

 

「面白いことをしたい」というのが、僕の創作の原動力です。一風変わった新しいことに挑戦したかったので、いつでも新鮮で、飽きないユニットになれたらと思い、この形にしました。また、ボカロ音楽の最大の特徴の一つである、ジャンルの広さを活かせる形で活動をしたかったので、毎回ゲストを迎えるのが一番ベストなのではないかと思っています。

 

──2月18日(土)に7th SINGLE「クウフク(starring VALSHE)」をリリースされました。アニメ『名探偵コナン』の新エンディングテーマでもありますが、改めて、どんな作品になりましたか?

 

満たされているはずなのに、どこか物足りない。日常的に感じるそんな気持ちが、味のしないフルコースによく似ているなと思いました。「食べても食べても満足できない」そんな曲であり、実は愛の歌でもあります。自分の本当の気持ちや、本当の愛ってなんだろう、なんてふと考えちゃう時があります。そんな気持ちを音に乗せました。今作はレイラ役のVALSHEさんのおかげで、力強いメッセージを持った楽曲に仕上がったと思います。

 

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7th SINGLE「クウフク(starring VALSHE)」ジャケット写真

 

──タイトル「クウフク」に込めた想いをお聞かせください。

 

仮タイトルは「空腹」だったのですが、漢字は意味を持ち合わせた文字なので、考えられる他の意味のニュアンスを消してしまう気がして、カタカナ表記にしました。特にカタカナ縛りをしている訳ではないのですが、実は毎作品、漢字だと何か違う気がしてカタカナになっています。

 

──名探偵コナンのエンディングテーマとなることが決まった時に感じたことをお聞かせください。

 

とにかく、素直に嬉しかったです。そして、幼い頃から親しんでいる作品である名探偵コナンのエンディングテーマを担当できるとは思ってもいなかったので、驚きの気持ちも大きかった気がします。ユニット活動を始めて1年半くらい経ちましたが、自分が叫び続けた音楽を認めてもらえたような気がして、救われた気持ちです。

 

──名探偵コナンのエンディングテーマとなることが決まった後に制作が始まったのでしょうか?また、制作時に意識されたことをお聞かせください。

 

決まるかどうかは分からないが、名探偵コナンのエンディングに挑戦してみないか、というお話をいただいて作った曲です。コナンの登場人物もきっと、求められる自分と実際の自分の乖離に悩んだりして、心に蓋をしている部分もあるんじゃないか、なんて考えながら書きました。コナン君と哀ちゃんというよりは、工藤新一と宮野志保、みたいな少し大人なキャラクターにフォーカスしたつもりです。

また、歴代のコナンっぽい曲を作るなら、僕みたいな新人よりも相応しい方がたくさんいると思い、敢えて自由に制作させていただきました。デモ段階でアニメの制作サイドの皆さんに聴いていただいて、この曲で、となったと聞いています。

 

──VALSHEさんとのコラボはどのようにして決まったのでしょうか?どのような部分が今回の作品とマッチすると考えられたか、などもお聞かせください。

 

VALSHEさんのライブを見させていただく機会があり、その歌声の力強さと優しさに衝撃を受け、終演後にご挨拶をさせて頂いた時に「いつかご一緒させてください」とオファーしました。丁度この頃に制作していたのが「クウフク」で、コナンのエンディングテーマに決まったりと、いろんなことが並行して進んでいきました。

 

──VALSHEさんとのコラボが決まった際の想いを教えてください。

 

VALSHEさんは、ネットシーン出身である点など自分と重なる所もあり、僕にとって憧れの存在です。過去のコナンのタイアップ曲も何度も聞いていたので、念願のコラボレーションでした。そんな方とのコラボだったので、嬉しいと同時に緊張と不安の気持ちが強かったです。

 

──レコーディングや制作時にVALSHEさんとご相談されたポイント等がありましたら教えてください。

 

最初に自分が歌ったデモを聴いていただき、実際にお会いして、曲に込めた想いなどを直接伝えさせていただきました。その後にパート分けを決めて、VALSHEさんと話し合いながらここはお互いにハモろうとか、ここはこういうニュアンスで歌おう、みたいなものを決めていきました。

 

──レコーディングされる際に意識されたことを教えてください。

 

音源制作からMIXまで、僕が担当させてもらったのですが、VALSHEさんは、やはり発声も良く声のツヤが違うので、自分の歌と合わせて聴いた時にどうしても自分の声が負けてしまい、圧倒的な歌唱技術の差に絶望したのはよく覚えています(笑)。VALSHEさんもこちらに寄り添って歌ってくださったので、とてもやりやすくはありましたが、とにかく食らいつく気持ちで何度も歌い直しました。

 

──レコーディング時の裏話などがありましたら教えてください。

 

実はそれぞれ別録りで、VALSHEさんはスタジオで歌を録りましたが、僕自身は宅録派なので、いつも通り自宅で、1人で歌録りをしました。その分、何日にも渡ってレコーディングをしていて。僕の歌に合わせてVALSHEさんに歌っていただき、それに合わせて僕が歌い、さらにそれに合わせてVALSHEさんに歌っていただき…と何度もやり取りをしながら、こだわって詰めていきました。

また、僕もスタジオでVALSHEさんのレコーディングにも立ち会わせて頂きましたが、細かいニュアンス表現の違う、いくつものパターンを歌ってくださって、一番お互いの理想に近い歌を録ることができたと思います。

 

──作詞の際に意識されたことを教えてください。

 

物分かりがいいように振る舞ってしまうことがあったり、本当は思いっきり暴れたいのに、でも暴れるのはやっぱり違うと思ったり、じゃあそんなハングリー感の中で自分はどう振る舞うのが正解なんだろうと考えたり。この曲を完成させるまで自分自身でもすごく悩み、葛藤しました。そんな迷いをご飯のキーワードに落とし込んだところは、とてもこだわっています。作詞にあたって、名探偵コナンの原作を読み返したりもしました。何度も咀嚼するうちに、様々な発見ができるような、面白い詞になったと思っています。

 

──楽曲制作時は曲先ですか?詞先ですか?その理由もありましたら教えてください。

 

僕の場合は“フレーズ先”ということになるのでしょうか…!?「フルコースだって味がしないようで」というフレーズが、歌詞とメロディを伴って浮かんできて、いきなり楽器を打ち込んで、その部分だけを完成させました。そして、じゃあ何故味がしないんだろう、と考えているうちに前後のメロなどが出来てきて、いつの間にかひとつの曲に仕上がっていた、という感じです。自分はインターネットで調べながら独学で曲作りを学んできたので、もしかすると少し特殊な作り方なのかもしれません。ボカロPさんにはこの話をすると共感されることがあります。

 

──MV(※近日公開予定)はどんな仕上がりになりましたでしょうか?

 

イラストレーターの“ぜんさい”さんに1枚のイラストを描いていただき、映像作家・監督の“きろとん”さんをはじめ、たくさんの方の力を借りて1つの動画に仕上げました。曲の世界をより広げ、深めてくれるような素敵な作品に仕上がったと思います。曲にぴったりなオシャレな動画をぜひ見て頂きたいです!

 

 

──今夜、あの街からとして、これから挑戦してみたいこと、目指していることを教えて下さい。

 

コロナ禍に始まったこのユニットですが、閉塞的な世界で退廃的で美しい音楽を、そんな当初から少しずつ僕自身も気持ちの変化が起きています。ヨルマチの物語の主人公ノラとレイラもきっと同じで、少しずつ心が外側に向いてきているのではないかと思っています。リスナーの皆さんには、「あの街」から抜け出そうとする2人の仲間として、一緒に戦って貰えたら嬉しいです。ネットの世界で発信し、皆さんのヘッドホンに音楽を届けていたヨルマチですが、次はスピーカーから実際に音を出して、より力強いメッセージを持って音楽を届けていきたいです。

 

──では、ノラさんがソロとして挑戦してみたいことはありますか?

 

より外側への発信をするという意味でも、ライブに挑戦したいです。これはヨルマチとしても、ノラのソロとしてもです。ストリーミングの音楽って体験から「触覚」が抜け落ちると思っているんです。会場の空気感や振動まで、余すところなく僕らの音楽を味わってもらいたいので、直接歌を届けられたらなと思います。

 

──ここからは少しプライベートな一面についても教えてください。ノラさんの「ファンの方もあまり知らなそうな、意外と〇〇な一面」はありますか?

 

実は小学生〜高校生まで、とある武道をやっていて、黒帯を持っていました。全国大会にも何度か出場して、けっこう頑張って練習していました。

 

──では、創作活動をする上で意識的にインプットされていることがありましたら教えて下さい。

 

ドラマ、アニメ、映画は意識して見ています。音楽は聴くことが普通に好きなので、ニューミュージックのリストやヒットチャートなんかをよく漁っています。大学は文学部だったくせに活字はちょっと苦手なので、映像作品を摂取することが多いです。

 

──最近ご自身の中でハマっていること、流行っていることを教えてください。

 

これはずっと続いているのですが、甘いものが大好きで相変わらずいろいろ食べています。ここ一週間は、すごい勢いでティラミスを食べています。業務用サイズを買ってしまったので、ハマったというよりは、意地になって食べています(笑)。

 

──ありがとうございました。最後に、応援してくれる方へのメッセージをお願いします。

 

いつも応援してくださり、ありがとうございます。ファンの皆さんのおかげで、こんなにも素敵な機会をいただくことができました!また、コナンのエンディングテーマから知ってくれた方も多いかと思います。これからも素敵なアーティストさんたちとコラボをしながら、最高の楽曲を作っていくので、ぜひ応援していただけたら嬉しいです。古参になってください!

 

文:レコログ編集部

 

▼7th SINGLE「クウフク(starring VALSHE)」はこちらから

レコチョク:https://recochoku.jp/artist/2001663798/

TOWER RECORDS MUSIC:https://music.tower.jp/artist/detail/2001663798

dヒッツ:https://dhits.docomo.ne.jp/artist/2001663798

  • 今夜、あの街から

    今夜、あの街から

    ボカロPノラを中心に結成されたネット発の音楽ユニット。
    毎作品ごとに女性ボーカリストを迎え、ノラと共に歌い上げていく。

    2021年6月立ち上げ。略称ヨルマチ。

    閉塞感漂う日々からいつか脱出して世界を変えたいと願う
    男女(ノラとレイラ)の物語を描いていく。

    <ボカロPノラ プロフィール>
    23歳。作詞/作曲/編曲/MIX、そして歌唱を担当。高校時代からネットシーンを中心に活動、自身もオリジナル作品を世に残したいという思いから、成宮 亮(@naryo_1008)として作詞作曲を始める。2021年6月からボカロPノラを名乗り、“今夜、あの街から”を立ち上げ、楽曲「ショウニントウソウ」を初投稿。