


マカロニえんぴつを“全年齢対象ポップスロックバンド”に導いたインディーズレーベル/マネジメント代表が語る、令和のロックバンドの届け方
レーベル/マネジメント・TALTO/murffin discs代表 江森 弘和
音楽業界で輝く方にスポットライトを当て、彼らの仕事や想いを通して音楽業界の今と未来を伝える新企画、3rd Lounge。
第8回は、東京カランコロン、SAKANAMON、マカロニえんぴつ、ヤユヨ、WONらを輩出しているmurffin discs内のレーベル/マネジメント・TALTO代表の江森弘和氏が登場。
今回は音楽ルーツや自身のターニングポイント、音楽業界の今や音楽の届け方の変化、新人アーティスト発掘の観点で大事にしていることなどを中心に、話を聞いた。
インタビュアーは今回もモデル業を中心に、多岐にわたって活躍する“音楽好きモデル”武居詩織が務める。
Chapter.1
音楽ルーツ、現在の仕事に至るまで
武居:江森さんが音楽を好きになったきっかけを教えてください。

江森:僕が幼少の頃はちょうどイカ天のバンドブームで、姉がたまが好きでカセットテープで聴いていたり、テレビでも筋肉少女帯とか“ナゴム系”、いわゆるアングラな音楽を聴いていたのを覚えています。親の影響も大きくて、カーステレオで流れている竹内まりやさんを毎日のように聴いていました。あと、レコード会社で働いている親戚がいて、年に何回か段ボールでCDが届いていたんですよ。カセットテープやレコードからCDになった時期で、家にCDコンポはあるけどCDを何枚も買えるわけがなかったので、それを洋邦問わず無作為に聴いていましたね。そんな環境が、僕があまりジャンルにこだわらず音楽を聴くきっかけになったと思います。

武居:自然に音楽が入ってくる環境だったんですね。その後、ご自身で音楽を聴くようになったのはいつ頃ですか?
江森:小・中とずっと野球をやっていたんですけど、中3の時に卒業祝いでもらったお金でギターを買って、高校でバンドを組んで学園祭とかでライブしたりしました。高3くらいになると当時はHi-STANDARDがロックフェス『AIR JAM』を始めたり、フジロックやRising Sun Rock Festival、ROCK IN JAPAN FESTIVALとかフェスが始まった時期だったんですよ。それまではテレビで見ていたような音楽が、そんなに背伸びせずTシャツと短パンでやっているのがカッコいい、みたいなカルチャーになって。世の中的にはヴィジュアル系も流行っていたし、ゆずとかも流行っていて、かたや小室ブームがあったり、音楽業界がとても盛り上がってCDが一番売れていた時代ですよね。その中で僕は、クラスの隅っこにいるような普通の人たちが楽器を持つとかっこいいみたいな、そういうソングライターの方に惹かれていって、大学でも遊びでバンドをやっていました。
武居:そこから仕事として音楽業界に興味をもたれたのは?
江森:もともと音楽業界に興味はあったんです。大学は社会学部だったので、広告代理店とかマスコミとかを目指す人が多い学部だったんですが、いかんせん就職氷河期で、音楽業界もほぼ募集なんてしてなくて。普通に卒業してSP広告系の会社に入って、その後転職して広告代理店で3年間働いたんですけど、その時のクライアントが音楽業界だったんです。アーティストのリリースのタイミングでプランを考えたり、テレビスポットをはめたり、世の中の広告代理店がやるようなことをやっていたんですが、それをやっていくうちに「本当に自分がかっこいいと思ったものをイチから発掘して売り出したい」っていう想いが強くなって、仕事をしながら、MY SPACEとかを見て新人を探したりもしていました。前職のマネジメント事務所の役員の方がお客さんだったので、「諦めきれないんですよ」と相談したところ、「じゃあ、うちにくるか」と。いろいろと経験をしただろうし、ということで入れていただいたんですけど、いきなり即戦力というわけではなかったから、入った当時は既存のバンドのプロモーションを担当して、広告代理店の知識と人脈を使って売り出すということをやっていました。それと並行して、自分が見つけたアーティストと一緒に成長したり、大きくなっていく経験をしたいと思って、新人発掘の方にも注力して。そのタイミングで東京カランコロンとSAKANAMONに出会って、その数年後にマカロニえんぴつと出会いました。
Chapter.2
ターニングポイントと大切にしていること
武居:新人発掘をしている時は、どんなところを見ていますか?
江森:ロックバンドなので、やっぱりライブがかっこよくないと一緒にやりたいと思わないですよね。でも、最初に聴くのはデモ音源じゃないですか。当時から既にDTMとかで一人で打ち込みで音楽が作れる時代で、クオリティはある程度保てるんですよ。ソングライターのメロディとか曲のクオリティ、歌詞のオリジナリティを見て、そこで興味をもったらライブを観に行って、たたずまいだとか歌の強さを見る。音源だと調整ができるけど、ライブだと調整ができないですからね。あと、楽器を持っていてかっこいいか悪いかって、一目瞭然で分かるじゃないですか。
僕は「TALTO」というレーベルを立ち上げたんですけど、周りからは、「TALTOのアーティストってポップスだけどロックで、ロックなんだけどポップスで、メロディが強く印象的で、一筋縄ではいかない変態性をもっているバンドが多い」ってよく言われます(笑)。
武居:確かに、ポップだけど個性派で面白いバンドがたくさんいるなっていうイメージがあります。
江森:そう、曲者ばかり(笑)。そういうバンドが集まってくるのは自分の趣味というか、幼少期から聴いていたものがすごく影響していると思うんですけどね。東京カランコロンはプログレだけどメロディは歌謡曲だったりするし、SAKANAMONは曲の構成が複雑だったりするけど、藤森元生の歌力はすごいし。歌詞もデビュー当時は特に“社会不適合者の応援歌”と言っている時点で、一般の方に受けようと思っていない(笑)。そして、マカロニえんぴつに出会って。彼らは4人とも音大卒なので音楽偏差値は当たり前のように高いんですけど、はっとり本人がユ
江森:そう、曲者ばかり(笑)。そういうバンドが集まってくるのは自分の趣味というか、幼少期から聴いていたものがすごく影響していると思うんですけどね。東京カランコロンはプログレだけどメロディは歌謡曲だったりするし、SAKANAMONは曲の構成が複雑だったりするけど、藤森元生の歌力はすごいし。歌詞もデビュー当時は特に“社会不適合者の応援歌”と言っている時点で、一般の方に受けようと思っていない(笑)。そして、マカロニえんぴつに出会って。彼らは4人とも音大卒なので音楽偏差値は当たり前のように高いんですけど、はっとり本人がユニコーンとか、90年代のUKロックに影響を受けているんですよ。世代は違えど、90年代の音楽に影響を受けているというところで、ちょうどひとまわり違うんですが同世代のような同じ感覚で話ができました。

ニコーンとか、90年代のUKロックに影響を受けているんですよ。世代は違えど、90年代の音楽に影響を受けているというところで、ちょうどひとまわり違うんですが同世代のような同じ感覚で話ができました。
武居:共通の話題があると、一緒にお仕事もしやすいですよね。
江森:好きなカルチャーが一緒だとそうですよね。あと面白いなと思ったのは、今の10代からすると、マカロニえんぴつは曲がいいとか歌詞がいいとか評価されていますが、4人の様々な趣味趣向が混ざり合った音楽としても面白くて“新しい”という感覚だと思うんです。ここ数年、音楽もファッションも90年代リバイバルが流行っていますよね。デビュー当時はあまり反響がなかったものが10代の間で徐々に“新しいもの”“面白いもの”になっていっているのは、今年結成10周年なんですけど、タイミングとかサイクルがはまってきたのかなっていう感じがありますね。10代には新しくて、30代40代には懐かしさがしっくりきて、それがまた受け入れられて。たとえばマカロニえんぴつがメジャーになってからついたタイアップが「クレヨンしんちゃん」とか「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」なんですよ。「ダイの大冒険」なんて、僕が小学生の頃にやっていたもののリバイバルですからね。世界中にファンがいるし、親世代が子供と一緒に見ている。マカロニえんぴつは結成当時から“全年齢対象ポップスロックバンド”と掲げてやってきたロックバンドなので、やっと、このタイミングでそれをやってもふさわしいバンドになってきたのかなと。もちろんタイミングが良かったお陰もありますが、今のサイクルにハマって“全年齢対象ポップスロックバンド”になりつつあるのかな、と思います。

武居:なるほど。実際に音楽業界に入って今まで関わってこられた中で、一番印象的だった出来事や、ターニングポイントを教えてください。
江森:やっぱり今のエッグマン、murffin discsで「TALTO」というレーベルを立ち上げたことです。前職のレーベル、マネジメントで出会った3バンドが一緒についてきてくれたこと、そして途中からエッグマンに入ってきた僕に、レーベル立ち上げの旗を振らせてくれたので、そこが一番のターニングポイントですね。
武居:江森さんがアーティストを育成する時に大切にしていることは何ですか?
江森:僕は他と同じようなことをやってもあまり面白くないし、意味がないなと思うんですよ。たとえばインディーズって、けっこうCDに固執しすぎる時期があったんですけど、僕はCDに固執しすぎてサブスクに出すタイミングが手遅れになっちゃうのが嫌だなと思っていたんで、CDとサブスクを徐々に同時にしていったんです。CDをおざなりにしているわけではなくて、サブスクで聴かれることでリスナーの母数が増えて、逆によりアーティストを深堀りしたくなった人がCDに戻ってきてくれるという考え方もできるんじゃないかなと。だから、マカロニえんぴつはバンドの中でもサブスク解禁がすごく早くて、コロナ期間中にリリースしたインディーズのラストアルバム『hope』が各配信サイトに受け入れられたのも、ずっと草の根運動をしていたからなんです。それがCDショップが臨時休業してしまったコロナ期間中も、サブスクでたくさんの人に聴いてもらえて、動きが止まらなかったきっかけになったと思うんです。今は時代が半年とか一年ごとに素早く変わっていくから、今までのやり方に固執しちゃうと、どんどん遅れていってしまうんですね。
武居:サブスクももちろんですが、ファンの方への届け方だったり、発信の仕方で気を遣っていることや工夫されていることはありますか?
江森:たとえばマカロニえんぴつは先ほどサブスクの話もしましたが、アルバムはレコードも出していたりします。おうち時間が増える昨今、家でレコードを聴く人も増えていますし。また、TALTOの所属アーティストはTikTokをやっているんですけど、僕らが戦略を考えて枠組みを決めても、本人たちが自ら楽しんでやっていかないと、今のリスナーは面白くなかったら見ないんですよね。無料のメディアってたくさんあるし、使える時間は限られているから。面白いコンテンツがいろいろとある中で、音楽に時間やお金を使ってもらうためには、もちろん楽曲ありきではありますが、本人たちがどう楽しくクリエイションしているかっていうのが大事で、それを前面に出すことを意識しています。
武居:実際に昨年マカロニえんぴつさんがレコード大賞最優秀新人賞を獲得するなど、かなり注目を集めたと感じたのですが、ステップアップしていくために、何か初期から目標をおいていたのでしょうか?

江森:どのバンドもそうなんですが、どんなに大きく時代が変わろうが、根本的にやることってそんなに変わらないんですよ。なので、目標と言われると、特にはないんですよね。武道館を目指すためにやるぞ!みたいなことでもなかったですし。本人たちは“目指す”ことよりも“憧れ”で音楽を続けているから。もちろんスケールが大きくなって見える景色も変わっていくと、アーティストの価値観ってどんどん変わっていくから武道館2daysもやるし、“動員を増やしていこう”とか“何枚売れよう”っていう目標も出てくるんだけど、それは数字の目標であって、本質ではないんですよ。それよりは毎回止まらずに、いいライブをやっていい曲を作って提供していく、ということしか考えてなかったですね。
武居:では、マカロニえんぴつがこれだけ注目を集めるようになったことについて、江森さんは何がきっかけになったと思っていらっしゃいますか?
江森:きっかけって言うとたくさんあるので難しいですけど。その時代ごとにメディアが変わっていったり、サブスクやTikTokという新しいサービスが出てきて、それに合わせる・合わせないはあるし、最初は何でも批判が付きまとうものなので、アーティストごとに必要か不必要かというのは選択していくものだと思うんです。
マカロニえんぴつに関しては、まだCDが売れてない時から楽曲のクオリティには自信があったし、はっとりっていうソングライターは絶対に国民的になると、出会った時から僕は言っていたんですよ。本人は「その話で酒が飲めます」と言ってましたけど(笑)。結局ロックバンドって、ライブがかっこよくないと人が離れていってしまうじゃないですか。だから、まずはライブを鍛えましょうということで、ハイエース一台で一緒に全国を回ったし、打ち上げも毎日のようにしたし。ロックバンドは時代が変わろうが、それをやるんですよ(笑)。
ただ、さっき言ったようにクリエイティブとか宣伝方法は時代によって考え方が変わっていく。それに関してはマカロニえんぴつは柔軟なタイプで固執してなかったので、サブスクの話もすぐに乗ってくれたんですよね。ずっといい曲を立て続けに出していたら、やっぱりきっかけって現れてくるんですよ。で、それがTwitterやTiktok等のSNSやサブスクきっかけだったりする。
たとえば『s.i.n』は移籍して初めて出したアルバムだったんですけど、最初は全然売れなくて。自信作だったからメンバーも僕もショックというか、ちょっと自信を無くしてしまったんですよ。でもその後にあがってくるデモもすごくよくて、“まだいけるよ”ってなっていた時にドラムが脱退して、“止まる?どうする?”ってなったんですね。だけど今絶対に止まっちゃダメだというところで続けていって、「ミスター・ブルースカイ」っていう曲が生まれたんですけど、年末にaikoさんがラジオで「洗濯機と君とラヂオ」を大絶賛してくれたり、「ミスター・ブルースカイ」が収録されている『CHOSYOKU』というアルバムはCD、サブスクともに1年以上かけて、徐々にですが浸透していった。いいものはそうやってタイムラグがあっても見つけてくれる人がいるんですよね。続けていく上でいろいろとアンテナを張っていたら、助けてくれる人や認めてくれる人がどんどん増えていく。それはコロナ禍でも止まらずに配信ライブやリリースを続けていたし、テレビも積極的に出演し、ツアーも回り続けてきたから。この2年間コロナでロックバンドが思うように活動できなかった中で、マカロニえんぴつが群を抜いて突き抜けることができたのは、それが理由かなと思っています。この2年間で趣向を変えて配信ライブも一番やったバンドじゃないかな。去年レコード大賞で最優秀新人賞をいただけたのは、2年間コロナで止まらなかったご褒美だと思っています。

武居:今、サブスクやパッケージなど様々な音楽の届け方がありますが、今後の音楽業界で注力していくべきところはどこだと考えていますか?
江森:僕が担当しているのは9割がロックバンドなんですけど、TikTokはまず無視できないなと思っています。ただ僕の場合、レーベルとして曲を売ることと同時に、マネジメントもやっているので、その戦略は同じようだけどちょっと違うし、ブランディング的な考え方からするとNGなんだけど、楽曲を広めるためにはやった方がいいとか、複雑にいろんなものが絡み合うじゃないですか。そんな中でTikTokって無視できないものなんですけど、いまだにファンの人の中にもTikTokで曲が使われるのは嫌だとか、チャラいって言う人もいるんです。だけどそれは人それぞれの価値観で。メディアも成長していくし変化していくもので、そことどう向き合うかなんだと思います。たとえば「なんでもないよ、」という曲はTikTokでの企画として、秋の歌うまアンバサダーに就任して、みんなにサビを歌ってもらうことをやったんです。最優秀投稿特典として当時、はっとりがSPACE SHOWER TVでレギュラーをしていた「OTONARI!!」という番組でパフォーマンスできるという賞がある。それが楽曲の広まりも相まってTikTokの企画の中でもかなりの応募があったらしいんですよ。それに対して批判とかはあまりなかったし、世代問わず小さいお子さんも参加できるので、みんなで楽しむことができた。今まで「ロックバンドだったら、ロック系の雑誌に出稿してラジオに出て、MVを流して…」みたいな、確固たるプロモーションっていうものがあって、今ももちろんそのプロモーションは大事ですけど、TikTokではそことは違う届かないところにリーチしたんです。
Chapter.3
音楽業界の変化、ロックバンドへの想い
武居:コロナ以降の音楽業界の変化を、江森さんはどう体感されていますか?
江森:さっきのTikTokの話もありますけど、そこから流行る楽曲の単曲単位での流行り廃りのスピードが早くなった感じはあります。あとはCDの売り上げが減って、よりサブスクで聴かれることが多くなりましたよね。だけど、レコードの購買は伸びているじゃないですか。家で音楽を聴く時間が長くなったからこそ、落ち着いて家で聴くなら耳が痛くない方がいいし、コレクションしたいからレコードで聴きたいんだろうなと思います。CDはよりコアファン向けのアイテムになってきていて、映像とセットになっていることも多くなりました。ライブの捉え方も変わりましたよね。今のライブ動員の分析を聞くと、コロナになって一人で来るお客さんが多くなっているらしい
江森:さっきのTikTokの話もありますけど、そこから流行る楽曲の単曲単位での流行り廃りのスピードが早くなった感じはあります。あとはCDの売り上げが減って、よりサブスクで聴かれることが多くなりましたよね。だけど、レコードの購買は伸びているじゃないですか。家で音楽を聴く時間が長くなったからこそ、落ち着いて家で聴くなら耳が痛くない方がいいし、コレクションしたいからレコードで聴きたいんだろうなと思います。CDはよりコアファン向けのアイテムになってきていて、映像とセットになっていることも多くなりました。ライブの捉え方も変わりましたよね。今のライブ動員の分析を聞くと、コロナになって一人で来るお客さんが多くなっているらしいんです。動員が減っているというよりも、友達が誘えなくなったからなのかお一人さまが増えている。その分が減っているんですよね。今は誘いづらくなっているんですかね。

んです。動員が減っているというよりも、友達が誘えなくなったからなのかお一人さまが増えている。その分が減っているんですよね。今は誘いづらくなっているんですかね。
武居:江森さんはレーベル代表となった今も新人発掘のためにEggsなどで探したりされていますか?
江森:めちゃくちゃしてますよ。マカロニえんぴつ以降もヤユヨやWONを発掘からリリースしてますし、Eggsさんとはオーディション「murffin audition」を一緒にやらせていただいて、今年で3回目かな。だからオーディションにエントリーされた楽曲は全部、必ず聴いていますよ。ただ、オーディションの座組みを立ち上げからコロナ禍になったりしたので、自分で立ち上げておいてまだ1アーティストも担当できていないんですよ。だから、今年はオーディションからも仕掛けていきたいと思ってます。僕がこうしてインタビューを受けるのも、オーディションに応募してきた人に、インタビューを読んで、このレーベルだったら興味ある、一緒にやってみたい、と思ってもらえたら嬉しいですし、新人のアーティストの人たちに、同じ価値観だなとか、この人だったら応募してみようかなとか、思ってもらえたらいいなと思っています。
武居:今年グランプリを獲る人は大チャンスですね。
江森:グランプリを僕が担当するかはわからないですけどね(笑)。本当にいいものは人にあんまり言いたくないので、あえて優勝させないパターンもあるかもしれない(笑)。

武居:最後に、音楽業界を共に盛り上げていく同志の方達にメッセージをお願いします。
江森:新卒や、これから音楽業界を目指す人に向けた話になりますが、今、音楽業界に憧れて入ってくる人が減ってきているんですよ。華やかそうに見える職種って実際の現場は泥臭いじゃないですか。憧れだけじゃなかなかやれないって分かっているんでしょうね。だけど、自分自身はアーティストじゃないけど、アーティストと一緒に夢を見られる仕事だと思っていて。ファンやリスナーだった時の感覚は変わらずに仕事ができると思うんですよ。もちろん自分の仕事にすることで趣味がなくなるっていうことはあるんだけど、より音楽を好きになると思うし、アーティストが大きくなった時の喜びも深くなると思いますよ。
同志の人達に対しては…みんなライバルですから(笑)、なんてコメントするか迷いますが、マカロニえんぴつが去年レコード大賞で受賞できた時、自分たち以上に周りの人たちの方が喜んでくれたんですね。ロックフェスが中止になったり、ライブハウスが元気がなかったところに明るい話題を提供できてよかったなと思っています。もうちょっと頑張れば、たぶんお客さんも徐々にだけど戻ってくるだろうと思うし、鬱憤がたまった活きのいい新人もどんどん出てくるだろうし、フェスも全国各地でやれるようになると思うので、みんなもへこたれずに頑張っていこうぜ、と思っています。
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江森 弘和
広告代理店、音楽プロダクション勤務を経て2016年にShibuya eggmanのレーベルmurffin discs内にTALTOを立ち上げ、新人開発からレーベル&マネージメントを行う。東京カランコロン、SAKANAMON、マカロニえんぴつ、ヤユヨ、WONを輩出。
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武居 詩織
埼玉県出身。透明感のある唯一無二の存在感で、広告・ファッション雑誌等で活躍。
UJI ROCKなど国内のフェスに毎年参加するほどの音楽フリーク。
音楽好きモデルとしてライブのレポートなどで活躍する傍ら、有名アーティストのMVにも続々と起用されている。