バンドがNFTを販売する意味と挑戦―株式会社ドリームライン・羽田野嘉洋氏が語る、音楽×デジタルで実現したかったことバンドがNFTを販売する意味と挑戦―株式会社ドリームライン・羽田野嘉洋氏が語る、音楽×デジタルで実現したかったことバンドがNFTを販売する意味と挑戦―株式会社ドリームライン・羽田野嘉洋氏が語る、音楽×デジタルで実現したかったこと

INTERVIEW

バンドがNFTを販売する意味と挑戦―株式会社ドリームライン・羽田野嘉洋氏が語る、音楽×デジタルで実現したかったこと

株式会社ドリームライン 羽田野嘉洋

音楽業界で輝く方にスポットライトを当て、彼らの仕事や想いを通して音楽業界の今と未来を伝える企画、3rd Lounge。

第10回は、株式会社ドリームラインの羽田野嘉洋氏が登場。
音楽業界で感じる変化や注目トピックスをはじめ、音楽を軸に様々なことを語ってもらった。また、murketを活用してオープンしたデジタル直販ストア「ドリームライン デジタルミュージックストア」でNFTコンテンツを販売したきっかけや狙いなども聞いた。

Chapter.1 
音楽ルーツと現在の仕事

──羽田野さんが音楽に興味を抱いたきっかけとなる、音楽ルーツをお聞かせください。

小学校低学年の頃からピアノを習っていたんですけど、5年生の時にクラスメイトからスピッツさんの「ロビンソン」を薦められて聴いたんですよ。綺麗なギターのアルペジオの旋律と、ボーカルの草野政宗さんの柔らかい歌声を聴いてすごく衝撃を受けてしまって。その衝撃はピアノを辞めてしまうほど大きかったです。

──学生時代はバンドの経験もあったそうですね。

はい。スピッツさんをきっかけにロックバンドが好きになって、中学の3年間はひたすら一人でギターを弾いていて、高校生になってからバンドを組みました。

バンドを始めるとライブハウスに出るようになるじゃないですか。そうすると、PAさんや制作側の方、いろいろなスタッフの方と関わるようになって、“音楽の仕事”に対するイメージがつき始めるんですよ。それで高校3年生になって進路を決めるタイミングで、このように音楽界隈で働いている人たちがやっている仕事をやってみたいなと思うようになりました。当時はレコーディングエンジニアになれば、バンドや歌手の根幹になる楽曲の制作に携われると思ったので、レコーディングエンジニアになるための勉強をしようと2年間音響系の専門学校に行きました。

羽田野嘉洋

──なるほど。確かに普通に生活をしていたら、PAやレコーディングエンジニアという職業に触れることがないですから、バンド活動が音楽業界に進むきっかけになったわけですね。ご自身がアーティストとしてデビューしよう、というふうに考えたことはなかったのですか?

実は子供の頃、音楽の仕事って歌手しかないと思っていたので、小学校の卒業文集に“25歳までに歌手になりたい”って書いていたんですよ(笑)。当時ヒットしていた方に25歳ぐらいの方が多かったので、そんなふうに書いていたんでしょうね。

──そうでしたか(笑)。では専門学校を卒業されて、そのまま音楽業界に就職されたのですか?

専門学校に行ったんですけど、学生生活がすごく楽しくて、社会に出たくなくなってしまって、その後4年間大学にも行ったんですよ。結果、6年間学生生活を過ごした後、サンライズプロモーション東京というイベンターに入社しました。そこでライブの企画運営からチケット業務といった仕事に、アシスタントとして携わりました。その後は今の事務所(ドリームライン)のグループ本体の会社を経て、現在に至るという感じです。

──現在はどういう業務をされているのですか?

ドリームラインは音楽事務所なので、メインの業務は、所属しているTHE SIXTH LIE(ザシクスライ)というロックバンドのマネージメント業務です。その他にも、俳優さんと映像作品を作ったり、音声コンテンツを作ったり、企業のPRムービーを作ったり、他社アーティストさんのライブ制作など、幅広く音に関わる事業を行なっています。

Chapter.2 
印象に残っている仕事、音楽の届け方における意識

──これまでのお仕事の中で一番印象に残っているのはどんなことですか?

ドリームラインに異動したのはコロナ前なんですが、コロナ禍というのが自分の中では一番大きな出来事です。すべての業務がストップしてしまって、仕事をしたくても何もできない状態が続いて。こんなに日本全国ですべてのものがストップするという経験はなかなかなく、未曾有の危機とはこういうことなんだなと思いました。

そんな中で、自宅にいても楽しめるような配信の企画を役者さんと一緒に作りました。それが「読奏劇」という企画で、国内外の名作をミュージックビデオのように演出するというライブ配信の朗読劇だったんです。知り合いの演出家と一緒に作り始めたものだったんですが、こういう危機がなければおそらく生まれなかったものだと思うんですよね。家から出られず、ライブにもお芝居にも行けないというお客さんに対して、直接的にニーズに合ったものを提供できたことが一番印象に残っています。

羽田野嘉洋

そんな中で、自宅にいても楽しめるような配信の企画を役者さんと一緒に作りました。それが「読奏劇」という企画で、国内外の名作をミュージックビデオのように演出するというライブ配信の朗読劇だったんです。知り合いの演出家と一緒に作り始めたものだったんですが、こういう危機がなければおそらく生まれなかったものだと思うんですよね。家から出られず、ライブにもお芝居にも行けないというお客さんに対して、直接的にニーズに合ったものを提供できたことが一番印象に残っています。

──「読奏劇」はどういう着想の元で生まれたものでしょうか?

僕が声を掛けた俳優さんたちの多くは、2.5次元と言われる界隈で活躍する方たちなので、普段はウィッグをつけていたり、特殊なメイクをして役を演じるので、ご自身として映像の世界に出演するということが実は少なかったりするんですよ。だからこそ、自分がもしもその俳優さんたちのマネージャーだったら、何か記録に残せるものがあったら嬉しいだろうなと思いました。

──「読奏劇」のような新しい配信での企画やライブ配信、サブスクなどもそうですが、このコロナ禍でデジタル化が一気に加速しましたよね。音楽を届ける手段として、アラカルト、サブスク、パッケージなど、さまざまな音楽の届け方がある中で、それぞれの特性を踏まえ意識されていることはありますか?

今や音楽事務所のスタッフでもCDプレイヤーを持っていない人もいるんですよ。なので、音源は名刺で、CD自体はグッズだなという感覚で僕は見ています。

THE SIXTH LIEの作品を例に挙げると、バンドメンバーからのアイデアで、CDのブックレットにちょっとした楽しめる工夫を凝らしたりしているんです。たとえば、窓の形にくり抜いてあって、中に地球をのぞいている女の子がいたり、3Dグラフィックを施していたり。フィジカルな物には、手に取ってもらった時にワクワクしてもらえるようなアプローチの仕方があるべきだなと思っています。

あと、サブスクリプションでは、様々な方に聴いてもらえるチャンスがある反面、様々な方に聴いてもらうには、最近の傾向であるイントロを短くしてすぐに歌に入る、ということをどうしてもやらざるを得ないなと思っています。昨今、イントロが長いと離脱率が高くなるという傾向があるので、サブスクに関してはイントロをほぼカットして。アラカルトはバンドを好きな方が買ってくださるイメージが強いので、イントロはフルバージョンで入れる、といった形で、パッケージ、ストリーミング、アラカルトとリスナーの皆さんを意識して使い分けができるように工夫しています。

羽田野嘉洋

──NFTやメタバースなどの新しいデジタル体験も活発化しています。そういったデジタル関連に関するものについて、意識されていることはありますか?

デジタル関連はかなり意識しています。THE SIXTH LIEは元々曲とビジュアルのイメージを、映像やアートと組み合わせて売り出していたんですよ。なので、元々デジタルでアートを出すということに対して抵抗がなかったんです。そんな中、世の中的にデジタルシフトが加速して、写真や動画をはじめとしたデジタルコンテンツをより楽しめるようになって、チャンスだなと思いました。

──音楽の届け方、ということでは、レコチョクが提供するECソリューション・murketを活用して「ドリームライン デジタルミュージックストア」を開設されました。その経緯を教えてください。

これまでもレコチョクの方に、いろんなお話をいただいていたのですが、なかなかうまくタイミングが合わなかったんです。ただ、ずっと細かい情報交換をさせていただいていたら「今度murketというソリューションを提供し始めるので、どうですか?」というお話をいただいて。僕は新しいものが大好きなので、基本的にすぐに飛び付いちゃうんですけど(笑)、その時にNFTを販売できる機能をつける予定だというお話を伺って、それにめちゃくちゃ食いつきました。ちょうど有名アーティストがアート作品を出品して数億円で売れたというニュースを見たばかりだった、というのもあり(笑)。

──その流れでTHE SIXTH LIEのNFT販売に繋がるわけですね。

THE SIXTH LIEは6にかけて6年目を周年としていたんですけど、先程も言ったように曲とアートと映像を組み合わせて売り出しているようなバンドなので、周年のタイミングでアートや写真を並べたブックレットを作りたいねっていう話をしていたんです。それで、そろそろ周年だから何かやらなきゃねっていう話をしている時に、ちょうどレコチョクさんからご連絡をいただいて。バンドのイメージとNFTは合いますし、このタイミングでご一緒できることはありませんか?とご相談させていただいて、販売に至りました。

──THE SIXTH LIEのNFTは、購入者限定でインタビュー付きのライブフォトブック、ライブのバックステージ動画などが見られるという内容ですよね。実際に販売されて、メンバーやお客さんの反応はいかがでしたか?

まず、現状「NFTを売ります」と言っても、まだNFTというもの自体が世の中的に浸透しきっているわけではないので、お客さんに分かってもらえるように伝えることを意識しました。「1年間撮りためた写真と、メンバーのインタビューを組み合わせた電子書籍で、その表紙がシリアルナンバーのついたNFTです」っていう言い方で発表したんです。さらに、「NFTの技術で後から動画が送られてきたりもしますよ」という説明をして。

本来のNFTとはちょっと違う説明になっているかもしれませんが、今はまだそういう形でお話する方がわかりやすいのかなと。ただ、「NFT嬉しい」と書いてくださっている方もいたので、理解をされている方も増えてきているのだなという実感も湧きましたし、何よりやって良かったなと思いました。

メンバーは、デジタルに精通しているメンバーもいれば、「NFT?何それ。美味しいの?」レベルのメンバーもいます(笑)。メンバーにNFTを説明するのはちょっと大変でした。

羽田野嘉洋

本来のNFTとはちょっと違う説明になっているかもしれませんが、今はまだそういう形でお話する方がわかりやすいのかなと。ただ、「NFT嬉しい」と書いてくださっている方もいたので、理解をされている方も増えてきているのだなという実感も湧きましたし、何よりやって良かったなと思いました。

メンバーは、デジタルに精通しているメンバーもいれば、「NFT?何それ。美味しいの?」レベルのメンバーもいます(笑)。メンバーにNFTを説明するのはちょっと大変でした。

──今後、「ドリームライン デジタルミュージックストア」でやってみたいことはありますか?

レコチョクさんにバンドメンバーもインタビューしていただいていて(https://recochoku.jp/ch/recolog/thesixthlie/)、その際に言っていたんですけど、元々デジタルアートをバンドとしてたくさん作っていたので、現在のNFTの主流な使い方とされている、アートを売買できる形で販売してみたいなという思いはあります。その間に僕らはバンドがより高みに行けるようにPRをしていき、将来バンドが大きくなった時にその売買が活性化されて、アーティストに還元できればいいなと思っています。

ただ、NFTを日本で普及させるなら、ファンクラブなどのクローズドなところでファンに向けてプレミアム感のあるものを提供するのが、一番日本人の気質に合うんじゃないかなと思っていて。音楽活動を軸にしつつも、NFTの商材をきっかけに、他にも企画を新しく作って落とし込んでいけたりするといいなと思っています。

Chapter.3 音楽の未来

──現在、音楽業界でもweb3としてNFTやメタバース、DAOなどを取り入れているアーティストが増えていますが、今後どのように発展していくと思われますか?

NFTの市場自体は今一旦落ち着いていると聞きました。おそらく日本では投資的な意味でははまりにくいのではないかと思っていますが、ファンに向けて特別な商材を提供するコンテンツとしては、はまるだろうなと思っています。メタバースもゲームをやらない方などには馴染みの薄いものだと思いますが、それもアーティストのコアファンに向けたサービスとなれば、逆に生きるだろうなと思うんです。クローズドなところでお客さんがより価値を感じられるようなサービスとして、web3が使われるようになるんじゃないかなと感じています。僕自身も、ゲームはやらないですけど、好きなアーティストがメタバースや仮想空間でライブをやるとなれば、その時は絶対に観に行きますから。

羽田野嘉洋

──ファンやアーティストの年齢によって理解の差が出ると思われますか?

実は僕、去年までそう思っていたんですよ。だけど、自分の親は60代なんですけど、フリマアプリを使いこなしているんですよ。写真の撮り方もそうですし、出品した時にどうしたら高く売れるか、みたいなことを熟知しているんですね。なので、サポートさえあれば、一瞬で普及すると思うんです。遠慮して古い状態に合わせていると、アップデートがされないので、どんどん置いていかれるんですよ。バンドもお客さんも一緒に新しいことを学んでいった方が、将来的にはいい結果を生むと思います。ちゃんと説明できれば、僕らが思っている以上に対応できると思いますよ。

──コロナ禍を経た今の音楽業界の中で、音楽を届けていく上で重要となるものは何だとお考えですか?

スピード感だと思います。僕らがマネージメントしているアーティストの大半は駆け出しなので、よりスピーディーに新しい情報を取り入れていくことが大事だなと思いながら、常日頃仕事をしています。たとえば、NFTといえば第一弾アーティストはこの人だったよね、って名前が挙がるぐらいに先手を打たなきゃいけないと思っていて。今は一般の方でも情報を入手するスピードが速くなっているので、それを上回るぐらい情報をキャッチして、素早く実行に移していかないと、5年後仕事がなくなるんじゃないかなっていう危機感をもっています。

──情報をいち早くキャッチするには、常にアンテナを張ってないといけないですよね。

そうなんですよ。NFTは2021年の流行語大賞候補30語にもノミネートされていたじゃないですか。だからなるべく早く出したかったんです。でも、それでも遅いぐらいで、もっと早い段階で取り組んでいる方達はいましたからね。今はバンドを応援してくれているお客さんの興味も幅広くなっていて、Amazon PrimeやNetflixなどもライバルになってしまう時代ですよね。そういう意味も含めて、スピードで勝負していくことができないと、特に駆け出しのアーティストに携わっている人たちにとっては大変かなと思います。

──それでは、10年後の音楽業界はどうなっていると思いますか?

昔、Amazonが普及してきて、電子コミックが台頭してきた時に、知り合いの漫画家さんが売り上げが増えたと言っていたんですよ。書店に本が並ぶ期間は短いんだけど、ネットだといつでも購入できる状態にある。音楽もサブスクが流行ってきている中で、ロングテールが生まれやすくなっています。サブスクやネットなら、最新の物と10年前、20年前の物が並列されますよね。いい曲、いい物は10年後、20年後でもヒットする。今もそういう兆候がありますが、そういうヒットがますます増えるんじゃないかなと思います。

羽田野嘉洋

昔、Amazonが普及してきて、電子コミックが台頭してきた時に、知り合いの漫画家さんが売り上げが増えたと言っていたんですよ。書店に本が並ぶ期間は短いんだけど、ネットだといつでも購入できる状態にある。音楽もサブスクが流行ってきている中で、ロングテールが生まれやすくなっています。サブスクやネットなら、最新の物と10年前、20年前の物が並列されますよね。いい曲、いい物は10年後、20年後でもヒットする。今もそういう兆候がありますが、そういうヒットがますます増えるんじゃないかなと思います。

──最後に、音楽業界を盛り立てていく同志に向けたメッセージをお願い致します。

こちらのサイトは企業の方や音楽関係者の方が多く見てくださっていると思いますので、この記事を読んでご興味を持っていただけたなら、我々やレコチョクさんと一緒に新しいものを作ってみませんか?僭越ながらそういう方がいらっしゃいましたら、一緒にお仕事をしてみたいなと思います。ぜひお声掛けください。

PROFILE

  • 羽田野嘉洋

    GUEST

    羽田野嘉洋

    株式会社ドリームライン
    2010 年にイベンター入社、ライブや演劇䛾運営・チケット業務にかかわる仕事を経て、2015 年にマネジメント事務所へ入社。
    2019 年により株式会社ドリームラインに所属。
    所属アーティストのマネジメント業務を中⼼に、⾳楽に関係する企画の⽴案・コンテンツ制作を⾏っている。

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