インディーズアーティストに新たなチャレンジとネクストステップの場を提供したい。エッグス担当者の取り組みと想い インディーズアーティストに新たなチャレンジとネクストステップの場を提供したい。エッグス担当者の取り組みと想い

INTERVIEW

インディーズアーティストに新たなチャレンジとネクストステップの場を提供したい。エッグス担当者の取り組みと想い

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レコチョクの子会社である株式会社エッグスでは、インディーズを中心とした3万組以上のアーティストと50万人以上のリスナーが登録する無料音楽プラットフォーム「Eggs」の運営や音楽で収益を得るためのファーストステップをサポートするサービス「Eggs Pass」(旧 TOWER CLOUD)など、インディーズアーティストの活動支援事業を展開しています。

「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL」、「FM802 MINAMI WHEEL 2023」などのライブイベント出演権をかけたオーディションを実施しているほか、出版社などとタッグを組み、漫画や小説作品のイメージソング制作企画を手がけるなど、インディーズアーティストに活躍の機会を多く創ってきたエッグス。

今回はエッグス社員である森にインタビューを実施。エッグスが実施したオーディションの内容や背景、実現したい世界観について語ってもらいました。

森稀沙南

森稀沙南

株式会社エッグス

2017年入社。インディーズアーティストの音楽活動に幅広く携わり、様々な角度からその魅力を発信したいと入社前からエッグスで働くことを志望。レコチョクに入社後、念願叶ってエッグスの社員に。現在はアーティスト窓口のほか、ライブハウスや他企業とコラボしたオーディションやイベントの企画から運営までを担当。

インディーズアーティストの活動支援事業を幅広く展開するエッグス

 

──エッグスの事業内容を教えてください。

 

エッグスは「多様な音楽があふれる未来をつくる。」というミッションのもと、インディーズアーティストの活動支援事業を展開している会社です。インディーズアーティストを中心とした3万組以上のアーティストと50万人以上のリスナーが出会える無料の音楽プラットフォーム「Eggs」の運営をしています。「Eggs」ではレコード会社や音楽事務所、音楽フェス、ライブハウスの方々と一緒にオーディションを開催・展開しています。

 

また、音源の配信代行やCD販売、プロモーションサポートなどの活動支援を行っている「Eggs Pass」も運営しています。

 

 

──森さんの担当業務を教えてください。

 

主に、ライブハウスや他の企業さんとコラボしたオーディションやイベントの企画から運営までを担当しています。あとは「Eggs」や「Eggs Pass」をアーティストの皆さんに活用してもらうためにサービスを紹介したり、機能改善などにも一部携わったりしています。エッグスは「やりたいことに挑戦できる」という雰囲気があるので、興味のあることにはどんどんチャレンジさせてもらっています。

 

──森さんにとって仕事のやりがいやモチベーションは何ですか?

 

以前、タワーレコードでの自主盤CDの販売に携わったアーティストさんが、ライブのMCで「森さんに感謝しています」と言ってくださって。純粋にそれが本当に嬉しかったし、根本的なモチベーションになっています。あとは、アーティストがどんどんステップアップしていく姿を見届けることですね。アーティストの成長を目のあたりにすることで、「自分も頑張らなくては」という気持ちになります。

 

 

 

音楽と漫画を掛け合わせたオーディションを実施

 

──さまざまなオーディションを企画されている中でも、印象的だったオーディションを教えてください。また、その企画の実施経緯も聞かせてください。

 

講談社さんと一緒に取り組ませていただいている、漫画作品のイメージソングを募集する企画です。最優秀賞と優秀賞に選ばれると、漫画コマと楽曲を掛け合わせた公式プロモーション映像が公開されるほか、受賞作品をまとめたイメージソングアルバムも配信されるというものです。

 

この取り組みは、講談社さんの方からお声がけいただいたのがきっかけでした。当時はコロナ禍で音楽系のイベントが少なくなっている状況下でもあったので、「アーティストにとって何かのきっかけになることができればいいな」という想いからスタートしました。

 

──漫画作品と音楽のコラボに、インディーズアーティストが選ばれた理由は何だったのでしょうか。

 

講談社さんとしては「枠にとらわれることなく多角的な視点で楽曲を制作してくれる、かつ、漫画と共に成長できるアーティストを探したい」という想いがあったそうです。オーディション開催前は「”漫画作品のイメージソング”というコンセプトが伝わるかな」という不安もあったのですが、募集を開始したら素敵な楽曲がたくさん集まりとても嬉しかったことを今でも覚えています。

 

第1回は2021年に、漫画『ぴちぴちピッチ』のイメージソングを募集しました。特定のキャラクターに向けた楽曲だったり、作品全体の雰囲気に合わせた楽曲だったりと、様々なアイディアと解釈を持った楽曲が集まりました。漫画『ぴちぴちピッチ』のイメージソングコンテストの最優秀賞は、シンガーソングライターの優莉さんが受賞したんですけど、漫画と楽曲をあわせた映像がYouTubeにアップされた瞬間にものすごく再生されて。『ぴちぴちピッチ』が海外でも人気な作品であることも追い風になって、約1ヶ月で20万再生を突破したんです。漫画作品の力をお借りすることで、普通の音楽活動では出会うことのなかったであろうたくさんの方に彼女の楽曲を届けることができたので、「これは良い取り組みになる」と改めて確信しました。

 

また、応募者はもともと作品のファンの方が多いのですが、漫画作品公認の二次創作という位置づけの企画は他になかなかないですし、何より自分の楽曲が漫画作品の公式イメージアルバムに収録されるというのは夢のある話だなと思います。

 

イベント出演をかけたオーディションではアーティストのライブに注目しがちなので、それ以外のところに焦点を当てる企画を実施することで、アーティストの新しい活躍の機会を創ることができたと考えています。

 

 

──出版社の方との取り組みを実施してみて、いかがでしたか?

 

オーディションの実施期間中に、作家さんも自ら情報発信してくれましたし、「(応募楽曲を)聴きながら作品を描いています」などと言ってくださったんです。作家さん含め、編集部のみなさんと企画のご担当者さんと私が良いチームとなって、進めることができたと思います。

『ぴちぴちピッチ』等で『なかよし』の編集部の方とご一緒したあと、『少年マガジン』や『ヤングマガジン』など、いろんな編集部の方や漫画家さんと取り組みができていて、とても感謝しています。

 

──漫画イメージソングのオーディションの審査基準は、どのようになっているのでしょうか?

 

まず、歌詞や曲調が漫画作品の雰囲気に合っているかどうかを意識します。『ぴちぴちピッチ』なら登場する女の子たちを彷彿とさせるような可愛らしさ、また夜の穏やかな海のような美しい雰囲気を持った楽曲、今年実施した『彼岸島』では作品からイメージしたような猟奇的かつ刺激的な楽曲が多かったですね。作品を読みこんでいるアーティストが作った楽曲は「この部分をイメージしているんだろうな」ということが伝わるので、審査する側も納得感があると思います。

 

また、作品によって応募してくださるアーティストの年齢層や雰囲気も大きく変わってくるのは面白いですね。V系バンドやインストバンド、劇伴作家さんなど、エッグスとしてこれまであまりピックアップする機会を持てていなかったジャンルのアーティストさんにも応募いただき一緒に取り組みができているのは、この企画ならではなのかなと感じています。

 

──双葉社さんとも一緒に取り組みを行っています。企画内容と実施した背景を教えてください。

 

双葉社さんと小説投稿サイト「エブリスタ」さんとの合同プロジェクトで、小説の世界観を題材に音楽を制作する企画「オトトモジ」を実施しています。小説と音楽を掛け合わせることで、新たなクリエイティブの世界が切り拓かれたらいいなと思い始まった企画です。

 

第1弾は、作家の清水セイカ先生の書き下ろし小説「生贄たちの午後」を題材にした楽曲を、夜更かしさんは白昼夢を見るのコンポーザーでもあるAyatoさんに作ってもらい、小説と楽曲を同時に発売しました。

 

小説のラフ原稿の段階からAyatoさんと双葉社さんと何度も打ち合わせをして、方向性やイメージを固めていきました。その甲斐もあって小説の内容にかなり寄り添った楽曲に仕上がり、曲中には隠されたメッセージが込められていたりもしています。楽曲を聴くことで小説の世界に入り込んだような気分を味わえるのではないかなと思います。

 

第2弾は4人組バンドのメリクレットさんと藤白圭先生の「意味が分かると怖い謎解き―祝いの歌―」で実施しました。楽曲制作と同時に小説を書いていただいていたのと、藤白先生がとても音楽がお好きであることも相まって、「オトトモジ」の座組やメリクレットが作る音楽に、企画の初期段階からかなり興味を持っていただけました。その結果、藤白先生が物語の中にメリクレットというアーティストを登場させてくださったんです。これは一緒に作り上げたからこそ実現したことですし、メンバーもとても喜んでいました。

 

「オトトモジ」はアーティストと出版社さんと作家さん、三者それぞれにメリットがある企画になったのではないかと思います。

 

また、10月から第三弾も実施しています。此見えこ先生による小説『今夜、死にたいきみは、明日を歌う』のストーリーをもとに人気急上昇中のシンガーソングライター・灯橙あかさんが作詞作曲した楽曲『今夜、死にたいと思った。だから、歌いたいと願った。』もリリースされたので、こちらも注目いただければと思います。

 

実力があれば誰でも活躍できる世界を作りたい

 

──他にはどのようなオーディションが印象に残っていますか?

 

渋谷のライブハウスSpotify O-Crestさんと同じく渋谷にオフィスを構えるエッグスが一緒に開催した『シブヤノラン』です。Spotify O-Crestさんゆかりの先輩アーティストとEggsの若手アーティストが対バンするという企画で、出演する若手アーティストはオーディションで選出しました。いちからコンセプトを考えイベントを立ち上げるのは初めてだったので、貴重な経験になりました。

 

ゲストバンドのラックライフさんも出演を快諾してくださって、オーディション中も「リスナー投票のアーティスト全部聴いたよ」とか「一緒に対バンしよう」など企画に関する情報を積極的に発信してくださいました。結果として出演アーティストは憧れのアーティストと対バンし、新規のファンも獲得でき、Spotify O-Crestさん側もライブハウスに出演する若手バンドを発掘できたので、良い取り組みになったと思います。

 

──森さんが今後やりたいことや、実現したい世界を教えてください。

 

Eggsは全国各地のアーティストがたくさん登録してくれているので、これまで現地へライブを観に行かないと出会えなかったアーティストに気軽に出会うことができるようになりました。ただ、登録してくれているアーティストや楽曲をより多くの人に届けるという点では、まだまだやれることがあるなと思っています。

 

アーティストの認知拡大やステップアップのための施策のひとつとしてオーディションを実施していますが、今後はタイアップや色々なクリエイターとのコラボレーションなど、音楽となにかを掛け合わせることで多くの人の目に止まるチャンスを提供したいなと思っています。アーティスト全員に平等にチャンスがあって、実力があれば誰でも活躍できる世界を、エッグスで作っていきたいです。

 

 

文:伊藤美咲

写真:平野哲郎

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