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INTERVIEW

ミッションは「音楽市場の最大活性化」―レコチョクの今までとこれから、そして変わらないこと

これまでとこれからの20年・社長就任時の想い

──板橋さんは2021年に社長に就任されました。

ちょうどレコチョク創立20周年で、事業環境も変化する中、会社もこれからの20年間をどうしていくかを考えていく、そんな節目のタイミングでした。就任したときに考えたことは、レコチョクのこれまでのやり方や功績の良い点は残していきながら、挑戦できていなかったことは積極的に変えていきたいということでした。
レコチョクは創業以来、レコード会社出身者が社長に就いてきましたが、私は純粋な音楽業界出身者ではなく、前職のバンダイから、「エンタメ」「デジタル」「モバイル」という3つの領域で仕事をしてきました。扱っているコンテンツはキャラクターIPから音楽IPへと変わりましたが、背骨のところは変わっていません。一貫してIPの価値を高め、ファンに喜んでもらい、ビジネスを最大化することに尽力してきたので、その強みを活かして、音楽市場への貢献もできるのではないかと考えています。

板橋徹

レコチョクの原点とミッション

──板橋さんが考えるレコチョクの原点とは何でしょうか?

レコチョクは、2001年に国内の主要なレコード会社が共同出資して誕生した会社です。
「着うた®」という、当時、革新的だった携帯電話向けの新しいコンテンツを配信していたのですが、携帯電話の着信音として鳴るという価値や、人に聴かせるというコミュニケーションなど、さまざまな要素を掛け合わせていきながら、音楽に付加価値をつけ、新しいものを作っていった。僕は音楽というコンテンツにどんな体験価値がつけられるか、ということを考えた先にあったのが当時の「着うた®」だったと思うんです。レコチョクの原点はそこにあると思っています。
レコチョクのミッションは「音楽市場の最大活性化」です。音楽はビジネスとしてもさらに大きくしていける可能性があると考えているので、新しい聴き方新しい商品を提案していくことによって、音楽の体験価値を向上させ、さらなる広がりを作っていく。原点から変わらず、それができるのがレコチョクという会社なのではないかと思っています。

──現在、レコチョクで展開している事業をお聞かせください。

大きく分けると4つの事業を展開しています。1つ目はレコチョクの看板でもある「BtoC向けの音楽配信事業」です。サービスモデルはいろいろと変化しながらも、インターネットを通じて皆さんに音楽を届けています。2つ目は、音楽を必要とするさまざまな企業様へサービスを提供する「BtoB、法人向けの音楽配信事業」です。3つ目は「ソリューションビジネス」です。これまで僕らがつくりあげてきたソリューションが、特に音楽業界の方々の課題解決につながるのではないかと思い、2021年に立ち上げました。最後が、子会社であるエッグスで展開している「インディーズアーティスト向けのビジネス」です。当社のミッションでもある「音楽市場の最大活性化」を形にした事業であり、音楽を発信していく若い人たちが増えていかないと、音楽市場全体は活性化しません。音楽ビジネスとして発信していけるような環境づくりや、お手伝いをさせていただいています。今後もクリエイターのためになることは何かを考えながら、より良いサービス提供をしていきたいと考えています。

──今の音楽業界はどのように映っていますか?

音楽の視聴方法や体験は時代とともに変化し、ヒットの生まれ方や、その指標も変わってきています。ゲームやSNS、動画視聴など音楽以外のエンタメもいろいろな形で出てきて、人々の興味や時間などが取り合いになっている中で、いかに音楽に興味を向けてもらい、ビジネスに繋げていくかが課題になっています。そこに対してどのように貢献していけるのかを考えてバリューを提供し続けることが、我々の責務だと思っています。

──板橋さんご自身の強みは何だと思われますか?

冒頭でもお話しましたが、「エンタメ」「デジタル」「モバイル」という3つは私のキャリアにおいて変わらない部分です。そのノウハウの蓄積が自分自身の強みだと思っています。
また、ずっと大事にしているのは“三方良し”という考え方を実現させることです。権利者とファン・消費者、そして弊社。弊社にはさらに協業のパートナーもいるので“四方良し”になりますが、自分の中でビジネスはそうあるべきだとずっと考えてきました。その方針はこれからも大事にしていくべきだと思いますし、こういった考え方を大切にしていることも自分の強みだと思っています。

“音楽業界のIT部門でありたい”

──最近では、相撲の断髪式、演劇公演など音楽以外のエンタメ領域でもビジネスを提供されていますね。

はい。ソリューションビジネスがエンタメ領域の中で、提供できる機会があればどんどんチャレンジさせていただいています。音楽フィールドではアーティストとファン、そして、その間に僕らが介在することで、よりそのアーティストや音楽を好きになっていくようなサービスや体験を提供していく。また、音楽以外のフィールドでも、我々が介在することで、好きなモノやコトが10倍20倍楽しくなったと思ってもらえるようにする。そして、最終的に音楽以外のフィールドで得た経験を音楽フィールドでも活かしていきたいと思っています。その点では音楽がレコチョクのビジネスの中心であることは変わっていません。

板橋徹

──レコチョクはこれからどんな存在になっていきたいとお考えですか?

夢としては大きく、「日本の音楽業界のIT部門になりたい」と思っています。個社毎に独自の仕組みをつくっていくことは、音楽業界に限らずコスト的なインパクトも大きいので、できるのであれば我々が共通化し、汎用化して、それを効率よく使っていただきたいと考えています。
一方で、汎用的なものしか提供できないというわけでもなく、個社ごとの課題もうまく解決できるように、バランスがとれたソリューションを提供していきたいと思っています。使い古された言葉かもしれませんが、痒いところに手が届くような、これまで培ってきた経験を活かしていきたいと思います。
また、web3、ブロックチェーン、メタバース、NFT、AIといったキーワードがどんどん出てきていますが、新しいデジタル技術を活用することで、音楽の付加価値を上げ、ビジネスの最大化に繋げていただくために、どんなサービス、ビジネスモデルを僕らが提供できるのかを、みんなでアイデアを振り絞って提案して実現していく。それが楽しくてしょうがない集団でありたいです。音楽業界の中で、レコチョクほど新しいサービスモデルを作ってきた会社はいないと自負しています。課題はありますが、これからも提案し続け、それが新しいスタンダードになっていくように、先陣を切って取り組んでいきたいと思います。

──レコチョクでは、社員として大事にすべきスタンスが掲げられていますね。

はい。「キョロキョロ」「ワクワク」「グイグイ」です。日頃からアンテナを高くして、いろいろな視点をもつ「キョロキョロ」。僕自身、日常的に、CMやコンビニエンスストア内の商品陳列などを見て、マーケティング的な裏側を想像したりすることが好きなんです。そして、こうなったらいいだろうなと想像する「ワクワク」、それを行動や事業に移せる「グイグイ」。社員にはこのキョロ・ワク・グイのスタンスを持っていてほしいと思っています。

──板橋さんは音楽の未来に「キョロ・ワク・グイ」していますか?

もちろんです。音楽は、クリエイティブや聴き方も、時代と共にその環境もどんどん変わってきていますが、やはり音楽には可能性はたくさんあると思いますし、その中で僕らが提案できることがまだまだあるんじゃないかと思っています。音楽業界全体に対しても、音楽を好きな方々に対しても、キョロキョロ、ワクワクしながら、これからもグイグイと新しいチャレンジを実現していきたいと思っています。

2023年6月30日
事業内容等はインタビュー公開時のものです。

PROFILE

  • 板橋徹

    板橋徹(いたばしとおる)

    1974年生まれ。
    バンダイに入社しネットワーク事業でプロモーションやマーケティングを担当後、ベンチャー系モバイルサービス会社へ。
    2008年にレコチョク入社。配信事業部長、執行役員、取締役を経て、2021年に代表取締役に就任。