レコチョクが発表した「2023年年間ランキング」から音楽シーンの“今”を解析する

レコチョクが発表した「2023年年間ランキング」から音楽シーンの“今”を解析する

株式会社レコチョク(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:板橋 徹、以下、レコチョク)は、2023年12月12日(火)、レコチョクが展開する音楽配信サービス、ダウンロードランキング「レコチョク年間ランキング2023」、サブスクランキング「dヒッツ® powered by レコチョク(以下、dヒッツ)年間ランキング2023」の2つのランキングを発表します(集計期間:2023年1月1日~11月30日)。
また、12月1日(金)にタワーレコード株式会社が発表した「TOWER RECORDS MUSIC 2023 年間再生ランキング」の結果もあわせた3つのレコチョク関連サービスのランキング(全16部門)を公開。
複数の音楽配信サービスを通して見えてくる2023年の音楽シーンを、音楽ジャーナリスト・柴 那典氏に読み解いていただきました。
※本文中で、特に表記がない月日は2023年のリリース日や関連する事象となります。

 
【柴 那典氏 レコチョクが発表した「2023年年間ランキング」から音楽シーンの“今”を解析する】

2023年にはどんなヒット曲が生まれたか。どんな話題が世を席巻したか。レコチョクが発表した「2023年年間ランキング」から、音楽シーンの今の様相を読み解いていきたい。

■2023年の“顔”はYOASOBIとBE:FIRST

まず誰の目にも明らかなことは、2023年はYOASOBI「アイドル」が破格のヒットを記録した1年だった、ということだ。

「アイドル」は、ダウンロードランキング「レコチョク年間ランキング2023」とサブスクランキング(TOWER RECORDS MUSIC、dヒッツ)の全ての楽曲ランキングで1位を獲得。さらに各アーティストランキング部門もYOASOBIが制覇。ハイレゾシングルランキング部門とアニメランキング部門でも1位となり、8冠を達成した。

TVアニメ『【推しの子】』のオープニング主題歌として今年4月に配信リリースされたこの曲は、上半期からランキングを席巻。下半期もその勢いは全く衰えることなく、記録的なヒットとなった。

そしてYOASOBI自身も「アイドル」1曲にとどまらない旺盛な活躍を見せた。9月にはTVアニメ『葬送のフリーレン』オープニングテーマとして書き下ろした「勇者」をリリースし、こちらも年間シングルランキング部門7位にランクインするスマッシュヒット。10月にリリースしたEP『THE BOOK 3』はアルバムランキング部門で3位にランクインしている。さらに11月には『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のインスパイアソングである「Biri-Biri」をリリース。YOASOBI初のゲーム作品とのコラボレーションとなったこの曲も大きな話題を呼んでいる。

12月から1月にかけては香港と台湾のフェスへのヘッドライナーとしての出演も含む初のアジアツアーも開催されている。すでに“国民的ユニット”としての座を不動のものにしつつあるYOASOBIだが、今年は海外での支持も広まり、名実ともにJ-POPを代表する存在となったと言えるだろう。

BE:FIRSTも「2023年の顔」と言うべき躍進を見せた。4月にリリースされた3rd Single『Smile Again』は、上半期でも2部門にて1位を獲得。年間ハイレゾアルバムランキング部門でも1位を獲得した。さらに9月にリリースされた 4th Single「Mainstream」はバンドルとしても購入され、「レコチョク年間ランキング2023」アルバムランキング部門で1位。シングルランキング部門でも3位となり、今年を代表する作品のひとつとなっている。
メンバー7人が制作段階から携わり、グループにとっての“勝負曲”としてリリースしたこの曲。壮大なスケールのミュージックビデオやクオリティの高いダンスが話題を呼び、大きな反響を巻き起こした。TikTokでもダンスチャレンジが広がり、ロングヒットに寄与している。

「Mainstream」のヒットからは、単にBE:FIRSTの人気拡大だけではない意味合いを読み解くことができる。野心的なヒップホップ・テイストのサウンドに乗せて、挑発的なリリックを歌うこの曲。キャッチーなメロディのダンス・ポップや情感的なバラードといった、わかりやすさや親しみやすさを打ち出すこれまでのJ-POPにおける「ヒット路線」とは異なる曲調だ。アニメやドラマ主題歌、CMソングのタイアップになっていない、というのもポイントだろう。こうしたタイプの曲がダンスをフックに大衆に広がっていくという現象には、J-POPにおけるヒットの力学の新たな側面も感じる。

■アニメとTikTokが生み出す日本のエンタメの新たな潮流

近年ではアニメタイアップからヒットが生まれる傾向が強くなってきているが、レコチョクの「2023年年間ランキング」でもYOASOBI「アイドル」を筆頭にアニメ主題歌が上位に多く並んでいる。

シングルランキング部門2位のMAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」は『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』のオープニング主題歌。5位の10-FEET「第ゼロ感」は映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌。11位のキタニタツヤ「青のすみか」はTVアニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」オープニングテーマだ。

この3曲に共通するのは、どれも疾走感あふれるロックテイストの楽曲であるということ。MAN WITH A MISSION10-FEETは長らくライブハウスを拠点に活動してきたキャリアを持つ実力派のロックバンド。キタニタツヤはボカロPとして活動をスタートし、ASIAN KUNG-FU GENERATIONなどギターロックにもルーツを持つシンガーソングライターだ。フェスへの出演も数多い。こうしたバンドやシンガーソングライターの活躍は、J-ROCKとアニメが結託してヒット曲を生み出す昨今の音楽シーンの象徴と言うことができるだろう。

Ado「唱」にも注目だ。9月にリリースされたこの曲は、レコチョクの月間ダウンロードランキングでは10月度、11月度で1位となるなど下半期のランキングを席巻。年間シングルランキング部門でも4位にランクインした。

いまや日本を代表する歌い手の一人となったAdoだが、この曲のヒットの要因に挙げられるのはTikTokだろう。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィーン・イベント『ハロウィーン・ホラー・ナイト』とのコラボレーション楽曲として書き下ろされたこの曲。2021年のヒット曲「踊」を手掛けたプロデューサーコンビGiga & TeddyLoidが手掛けた刺激的なEDMナンバーだ。リリース直後からTikTokでダンスチャレンジが広がり、ハロウィーンの盛り上がりの後もロングヒットが続いている。

Adoにとっても、社会現象を巻き起こしたデビュー曲「うっせぇわ」、アニメ映画『ONE PIECE FILM RED』の歌姫“ウタ”として歌った「新時代[ウタ from ONE PIECE FILM RED]」に続く、新たな代表曲となったといえる。2024年2月から4月にかけては初のワールドツアー、そして4月には最大規模となる東京・国立競技場でのワンマンライブが予定されている。センセーションはまだまだ続きそうだ。

そして「アイドル」と「唱」という2023年を代表する二つのヒット曲には共通する要素を見出すこともできる。どちらも数秒で耳をひきつけるメロディ、そしてクルクルと目まぐるしく展開する曲構成を持っている。こうしたインパクトの強い曲調が、TikTokからヒットが生まれる昨今における“J-POPの新たな王道”となっている。

レコチョクの年間シングルランキング部門で16位となった新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」もTikTokの「首振りダンス」からヒットが広がり2023年を象徴する曲の一つになった。彼女たちも海外人気は高く、11月から12月にかけて行われた北米、メキシコ、香港、バンコクをまわるグループ初のワールドツアーも盛況を呈している。

アニメとTikTokを介して、国内だけにとどまらない日本のエンタメの新たな潮流が生まれていると言えるだろう。

Mrs. GREEN APPLEも2023年を象徴するアーティストの一組だ。今年で結成10周年を迎えた彼らは自身初のドーム公演を成功させるなど大きく飛躍。ひとつの曲が飛び抜けてヒットしたというよりも「ケセラセラ」や「ダンスホール」「Magic」など、様々な楽曲の人気が高まったのが特徴で、その結果は「レコチョク年間ランキング2023」アーティストランキング部門で4位、「dヒッツ」アーティストランキング部門で2位、「TOWER RECORDS MUSIC」アーティストTOP10で6位という結果に表れている。

ちなみに、大晦日に放送される紅白歌合戦には、ここまでに名前を挙げたYOASOBIBE:FIRSTMAN WITH A MISSIONmilet10-FEETキタニタツヤAdo新しい学校のリーダーズMrs. GREEN APPLEが出場する。

紅白歌合戦の出場者の選考にあたっては「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」が基準だと発表されている。ランキングはまさに「今年の活躍」を反映した内容と言える。
■ダンスボーカルグループの地殻変動

今年の音楽シーンにおいて大きな話題を集めた出来事と言えば、7月に放送された『音楽の日2023』におけるダンスコラボが挙げられる。s**t kingzDA PUMP三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEGENERATIONS from EXILE TRIBEJO1INIBE:FIRSTTravis Japan&TEAM郷ひろみPSYCHIC FEVER from EXILE TRIBEDXTEENMAZZELといった総勢91名の人気ダンスボーカルグループが事務所の垣根を越えて共演した企画だ。

その中でも、2023年5月にSKY-HI率いるBMSGからデビューを果たした8人組ダンス&ボーカルグループMAZZELは、上半期に続いて「レコチョク年間ランキング2023」と「TOWER RECORDS MUSIC」の新人アーティストランキングで1位を獲得。大きな地殻変動のあったダンス&ボーカルグループのシーンにおいても、今年ブレイクした注目株となった。

また、Travis Japanの「Moving Pieces」がレコチョクの年間ビデオクリップ部門で1位を獲得。また、年間シングルランキング部門でも「Moving Pieces」は10位、12位には「JUST DANCE!」がランクインしていることも見逃せない。

11月に放送された『ベストヒット歌謡祭2023』でも、「デビュー同期3組コラボメドレー」としてINIなにわ男子BE:FIRSTによるコラボが話題になるなど、グループ同士のコラボレーションも活発になっている。

こうした音楽番組だけでなくテレビのOAやそれをきっかけにしたSNSの動きと連動したランキングとなっているのも「レコチョクランキング」の特徴の一つだ。洋楽部門の1位はボン・ジョヴィ「イッツ・マイ・ライフ」。なかやまきんに君のネタでBGMに使われる楽曲で、なかやまきんに君のテレビでの露出と共にランキングも上昇する傾向にあった。

音楽シーンは多様化が進み、よりボーダレスになりつつある。それだけに、世代を超えた認知につながる話題性がヒットの鍵になる。「レコチョクランキング」はそんな時代の潮流を反映していると言えるだろう。
▼レコチョク年間ランキング2023  https://recochoku.jp/special/100965
▼dヒッツ年間上半期ランキング2023  https://dhits.docomo.ne.jp/ft/sys00450
▼TOWER RECORDS MUSIC 2023 年間再生ランキング https://music.tower.jp/special/00015

 

柴 那典/しば・とものり

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。
ブログ「日々の音色とことば」http://shiba710.hateblo.jp
Twitter:@shiba710
note : https://note.com/shiba710/

 

※「dヒッツ」は株式会社NTTドコモの登録商標です。

 

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