レコチョクが発表した「2022年年間ランキング」から音楽シーンの“今”を解析する

レコチョクが発表した「2022年年間ランキング」から音楽シーンの“今”を解析する

株式会社レコチョクは、2022年12月9日(金)、レコチョクが展開する音楽配信サービス、ダウンロードランキング「レコチョク年間ランキング2022」、サブスクランキング「レコチョク年間サブスクランキング2022」「dヒッツ® powered by レコチョク(以下、dヒッツ)年間ランキング2022」、計3つのランキング(13部門)を発表いたします(集計期間:2022年1月1日~2022年11月30日)。
複数の音楽配信サービスを通して見えてくる2022年の音楽シーンを、音楽ジャーナリスト・柴 那典氏に読み解いていただきました。

 

【レコチョクが発表した「2022年年間ランキング」から音楽シーンの“今”を解析する】

2022年は、どんな楽曲が世を彩り、どんなアーティストが飛躍を果たしたのか?レコチョクが発表した2022年年間ランキングからは、様々な話題が生まれた今年の音楽シーンのありさまが見て取れる。

ランキングは、ダウンロードとストリーミング(「サブスク」「dヒッツ」)ごとに発表された。テレビやSNSでの話題性をビビッドに反映するダウンロードのランキング、リスナーの日常に寄り添い長く愛され続ける曲が上位にならぶストリーミングと、サービスによって傾向が異なるのも興味深い。各ランキングから、今の時代のヒット曲がどのようにして生まれ、その背景にどんな潮流があるのかを読み解いていきたい。

■2022年の“顔”はAdoとAimer

まず、2022年を象徴するアーティストとして真っ先に名を挙げられるのが、ダウンロード「レコチョク年間ランキング2022」でアーティストランキング1位を獲得したAdoだろう。デビュー曲「うっせぇわ」が昨年に社会現象を巻き起こし、シーンに鮮烈な登場を果たしたAdoだが、2022年はアーティストとしての抜きん出た実力とカリスマ性を示した1年となった。1月には様々なボカロPをクリエイターとして迎えた1stアルバム『狂言』をリリースし、8月にはさいたまスーパーアリーナでのライブも実現。さらには記録的な興行収入となった映画『ONE PIECE FILM RED』で歌姫・ウタの歌唱をつとめ、主題歌「新時代[ウタ from ONE PIECE FILM RED]」と劇中歌を含むアルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』も大ヒット。結果、「レコチョク年間ランキング2022」のアルバムランキングでは『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が1位、『狂言』が2位とTOP2を独占しハイレゾアルバムランキングもあわせて計3冠を獲得。「新時代[ウタ from ONE PIECE FILM RED]」も「レコチョク年間ランキング2022」シングルランキング2位と、目覚ましい活躍を見せた。

一方、楽曲では「レコチョク年間ランキング2022」シングルランキング1位となったのが、Aimerの「残響散歌」。昨年12月から今年2月まで放送されたテレビアニメ『鬼滅の刃』遊郭編オープニングテーマに起用された1曲だ。鮮烈な曲調と深みのあるハスキーボイスが魅力のこの曲はアニメ放送終了後も長く支持を集め、結果、ダウンロード、ストリーミング(サブスク、dヒッツ)3つのランキングのシングル・楽曲ランキングを制覇。ハイレゾシングルランキングもあわせて計4冠を達成と、まさにリリースから約1年近い今なお注目される人気作ということが証明された。
Aimerは「レコチョク年間ランキング2022」でもアーティストランキング4位を獲得。デビュー10周年を迎えた今年はYouTubeの人気チャンネル「THE FIRST TAKE」への出演、全楽曲のストリーミング配信解禁、アリーナツアーの開催など精力的な活動を展開し、飛躍の一年となった。

■アニメが日本のエンタメの中心に。ドラマや映画からもヒット曲が多数生まれた1年

今年は他にもアニメタイアップから沢山のヒット曲が生まれた1年だった。「レコチョク年間ランキング2022」シングルランキング3位のOfficial髭男dism「ミックスナッツ」は『SPY×FAMILY』オープニング主題歌、8位のYOASOBI「祝福」は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』オープニングテーマ、10位の米津玄師「KICK BACK」はテレビアニメ『チェンソーマン』オープニングテーマ、11位のKing Gnu「逆夢」は『劇場版 呪術廻戦 0』エンディングテーマ。どれも人気と実力を兼ね備えたアーティストが手掛けたアニメ主題歌だ。ハートウォーミングなストーリーで老若男女に人気が広がる『SPY×FAMILY』を筆頭に、アニメがいまや日本のエンタメの中心となり、その主題歌が幅広い世代に聴かれるヒット曲となっている状況が見て取れる。

こうしたアニメ主題歌のヒット曲の大きな特徴は、アーティスト側がアニメや原作漫画をリスペクトし、作品のテーマや世界観に寄り添い、文字通り“主題”を表現するような楽曲を意識して作っているということ。単なる露出の機会としてのタイアップではなく、クリエイティブな結びつきの深さが支持に結びついているのである。『君の名は。』『天気の子』に続き初週から記録的な興行収入となっている新海誠監督の話題作『すずめの戸締まり』でも、新海監督の盟友的な存在となった野田洋次郎率いるRADWIMPSが作曲家・陣内一真と共に音楽を担当。主題歌の「すずめ (feat.十明)」「カナタハルカ」が11月度の月間シングルランキングで7位・8位にランクインするなども話題を集めている。
2023年以降にはテレビアニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編、『呪術廻戦』2期の公開も予定されている。アニメからヒット曲が生まれる潮流はこの先も続きそうだ。

また、2022年はドラマ主題歌のヒット曲が生まれた1年でもある。「レコチョク年間ランキング2022」シングルランキング4位のKing Gnu「カメレオン」はフジテレビ2022年1月期 月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』主題歌。動画配信サービス『TVer』上で再生数が歴代最高記録を塗り替えるなど社会現象を巻き起こしつつある『silent』(フジテレビ系)主題歌のOfficial髭男dism「Subtitle」も10月のリリースながら5位にランクインしている。12位のUru「それを愛と呼ぶなら」はTBS系 日曜劇場『マイファミリー』主題歌だ。

「レコチョク年間ランキング2022」で新人アーティストランキング1位となったLizabetも、デビュー曲「Another Day Goes By」がTBS系 日曜劇場『DCU』の主題歌となりドラマタイアップによって知名度を上げたアーティストだ。

話題の映画からのヒット曲も相次いだ。「レコチョク年間ランキング2022」シングルランキング6位の米津玄師「M八七」は庵野秀明が企画・脚本をつとめた映画『シン・ウルトラマン』の主題歌。7位のSEKAI NO OWARI「Habit」は蜷川実花監督の映画『ホリック xxxHOLiC』主題歌で、TikTokで大きくバズが広がった、コミカルで中毒性のあるダンスもヒットにつながる大きな原動力となった。洋楽部門1位のレディー・ガガ「ホールド・マイ・ハンド」は、洋画としては3年ぶりに国内興行収入100億円を突破した映画『トップガン マーヴェリック』の主題歌だ。前作『トップガン』の主題歌であり、最新作でも使用されているケニー・ロギンス「デンジャー・ゾーン」も2位にランクインした。

アニメ、ドラマ、映画の主題歌タイアップによるヒット曲がめざましく増えている状況の背景には、コロナ禍での外出自粛もあってエンタメ全般に逆風が吹いていた過去2年に比べて、テレビや映画の“話題喚起力”が復権してきていることがうかがえる。テレビを観る人、映画館に足を運ぶ人だけでなく、各種動画配信サービスでコンテンツが配信され、それぞれのユーザーが好きな形で楽しむクロスプラットフォーム的な状況が整備されたことも大きい。多様なエンタメとのタッチポイントが増え、そこでの話題性がヒット曲に結びつく新たな導線が生まれつつあるのではないだろうか。

■ボーイズグループ新時代到来。K-POPは新世代台頭

2022年はボーイズグループの新時代が到来した1年でもある。その主役の1組と言えるのが、SKY-HIが設立したマネジメント / レーベル「BMSG」主催のオーディション『THE FIRST』から誕生した7人組BE:FIRSTだ。今年11月でデビューから1周年を迎えた彼らにとって、今年は飛躍の1年となった。卓越したダンスパフォーマンスとボーカルの表現力、そして楽曲の魅力で着実に支持を広げている。
レコチョクランキングにおいては、BE:FIRSTの「Bye-Good-Bye」が「レコチョク年間ランキング2022」シングルランキング16位、アルバム『BE:1』はハイレゾアルバムランキング5位にランクインした。
月間アルバムランキングでも、『Bye-Good-Bye』はバンドル購入され、5月度1位と、リリースタイミングでのファンの応援もランキングを押し上げた形だ。

K-POPのフィールドを見ると、BTSが「レコチョク年間サブスクランキング2022」でアーティストランキング1位と根強い人気を示している。グローバルなポップスターとして華々しい活躍を見せてきた彼らは、今年10月にメンバー7人が順次兵役につくことを発表した。当面の間はそれぞれのソロ活動に注目が集まる。

また、2022年は新世代のガールズグループが躍進を見せた1年でもある。その代表が、ストリーミング「レコチョク年間サブスクランキング2022」で新人アーティストランキング1位を獲得した9人組グローバルガールズグループ・Kep1erだ。日中韓合同のオーディション番組『Girls Planet 999:少女祭典』から誕生したグループで、1月にミニアルバム『FIRST IMPACT』で韓国デビュー。デビュー曲「WA DA DA」がTikTokでのダンスの流行を生み出すなど日本でも注目を集め、今年9月には「<FLY-UP>」で待望の日本デビューも果たし、国内での人気を確実にしている。

■YOASOBI、優里のロングヒットと、見えてきた“令和のJ-POPシーン”

ストリーミングのランキングを見ると、また違った角度から現在の音楽シーンの状況が見えてくる。特筆すべきは“国民的ユニット”となったYOASOBIの存在感だ。ダウンロード、ストリーミングの3つのアーティストランキングを制覇した昨年に続き、今年は「dヒッツ年間ランキング2022」のアーティストランキング1位。「レコチョク年間サブスクランキング2022」のアーティストランキングでも2位となっている。デビュー曲「夜に駆ける」は2019年リリースの楽曲ながら3年を経た今年もなお「レコチョク年間サブスクランキング2022」の楽曲再生回数ランキング4位という驚異的なロングヒット。2020年リリースで同7位の「群青」も見逃せない。前述の「祝福」や直木賞作家4名とのコラボ・プロジェクト、初の夏フェス出演など多彩な活動を繰り広げたYOASOBIは、今年も第一線を走り続けてきた。

優里の「ドライフラワー」も、2020年リリースながら「レコチョク年間サブスクランキング2022」3位とかなりのロングヒットを見せている。同2位には昨年11月にリリースされた「ベテルギウス」がランクイン。今年1月にファーストアルバム『壱』をリリースし、ライブツアーやリリースに加えて、YouTubeチャンネルでも精力的に活動を繰り広げている。

長く愛されるロングヒット型の楽曲の特徴は、やはり何度聴いても飽きないタイプのポップセンスが宿っていること。親しみやすいメロディや耳に心地よい歌声が魅力のアーティストが“令和のJ-POPシーン”の担い手として着実な地位を築いてきたことがうかがえる。
様々なヒット曲が生まれ百花繚乱の1年となった2022年。各種年間ランキングはその充実と多様性を反映した結果になったと言えるだろう。

【レコチョク年間ランキング2022】https://recochoku.jp/special/100952
【レコチョク年間サブスクランキング2022】
▼アーティストランキング2022  https://music.tower.jp/playlist/detail/2000137167
▼楽曲再生回数ランキング2022   https://music.tower.jp/playlist/detail/2000137168
【dヒッツ年間ランキング2022】 https://dhits.docomo.ne.jp/ft/sys00425

 

柴 那典/しば・とものり
1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。
ブログ「日々の音色とことば」http://shiba710.hateblo.jp/
Twitter:@shiba710 /note : https://note.com/shiba710/

 

 

※「dヒッツ」は株式会社NTTドコモの登録商標です。

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