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ミシシッピ州ジャクソンに生まれ、ジョニ・ミッチェルの影響でギターの弾き語りを始め、ジャズ・シンガーとしてデビューする前はブルースやR&Bを歌っていたカサンドラ・ウィルソン。こうしたカサンドラのバックグラウンドに焦点を当てることによって、彼女の潜在的な才能を引き出したのが、クレイグ・ストリートのプロデュースによる傑作『ブルー・ライト』(93年)だった。以後、カサンドラは、自分自身の故郷であるミシシッピを源流とするブルースを強く意識するようなり、その新しい表現法を追い求めてきた。この、主にミシシッピで録音された『ベリー・オブ・ザ・サン』は、そんなカサンドラのまさしくブルースを巡る旅の記録、ひいては音楽の旅人である彼女の一つの大きな到達点である。<br> 幕開きを飾るのは、米国音楽のルーツを探究し続けたザ・バンドの(1)。そして(3)(5)(13)、とブルース・ナンバーが取り上げられている。また、(8)はグレン・キャンベルのヒット曲として知られるジミー・ウェッブの曲、(9)はボブ・ディランの曲だ。もっとも、本作は単に米国音楽のルーツを掘り下げた作品ではない。というのも、(4)(14)はアントニオ・カルロス・ジョビン、そしてジェイムス・テイラーの(6)もブラジル風味豊かなナンバー。すなわちカサンドラは国籍や音楽のジャンルの境界線を跨ぎ、ブラジル音楽(ショーロも含む)やカリブ音楽の要素も取り込んだ、汎ブラック・ミュージックを生み出しているのだ。このような本作は、(12)に客演しているオル・ダラが2001年にリリースした傑作『ネイバーフッズ』と兄弟のような関係にある。無論、母親はミシシッピに根付いている音楽。が、このサザン・レディは、カリブ海やブラジルを経てアフリカに至るまでの旅を繰り広げている。この時空を超えた"移動の感覚"が、本作のキモ。また、各種弦楽器と打楽器を主体とした編曲は滋味豊かで、噛み締めるほどに味わいが増す。とりわけオリジナルの(10)が絶品だ。(CDジャーナル)
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