「レコチョク上半期ランキング2021」から音楽シーンの“今”を解析する

「レコチョク上半期ランキング2021」から音楽シーンの“今”を解析する

株式会社レコチョクでは、2021年7月9日(金)、レコチョクが展開する音楽配信サービス、ダウンロード部門「レコチョク上半期ランキング2021」、ストリーミング部門「レコチョク上半期サブスクランキング2021」「dヒッツ® powered by レコチョク(以下、dヒッツ)上半期ランキング2021」、計3つの上半期のランキングを発表(集計期間:2021年1月1日~2021年6月30日)。
ダウンロード、サブスクといった複数の音楽配信サービスを通して見えてくる音楽シーンの今を、音楽ジャーナリスト・柴 那典氏に読み解いていただきました。

■2021年上半期ランキングはYOASOBIが音楽配信ランキングを席巻

2021年上半期ランキングはYOASOBIが音楽配信ランキングを席巻「2021年上半期ランキング」では、YOASOBIがダウンロード、ストリーミング(サブスク、dヒッツ)の3部門でアーティストランキング1位という快挙を達成した。

YOASOBIは、コンポーザーのAyase、ボーカルのikuraからなる「小説を音楽にする」ユニット。2019年10月の結成から、デビュー曲「夜に駆ける」で一躍ブレイクを果たし初の紅白歌合戦も実現した2020年に続き、2021年も勢いがとどまるところを知らない活躍を見せている。

ランキングから見えてくるのは、「夜に駆ける」1曲だけにとどまらず、2021年に入ってからYOASOBIのアーティストとしての人気が着実に広まりつつある、ということだ。

もちろん「夜に駆ける」のロングヒットも続いている。ダウンロード部門の「レコチョクランキング(シングル)」2位、ストリーミング部門の「レコチョク上半期サブスクランキング2021」の「再生回数ランキング」1位と、昨年に続いてランキング上位を席巻している。ただ、ポイントは「夜に駆ける」以外の曲や作品も数多く上位にランクインしているということだ。

その代表が、2021年1月6日にリリースされた「怪物」。アニメ『BEASTARS』第2期のオープニングテーマとして書き下ろされ、ダークな疾走感を持ったサウンドでYOASOBIの新たな一面を見せた一曲だ。こちらも「レコチョクランキング(シングル)」5位となっている。

また2021年1月6日にリリースされた1stEP『THE BOOK』はダウンロード部門「レコチョク上半期ランキング2021」で「アルバムランキング」「ハイレゾアルバムランキング」1位を獲得している。

さらに「dヒッツ上半期ランキング2021」の「myヒッツランキング」では、「怪物」(3位)、「夜に駆ける」(5位)、「群青」(7位)、「アンコール」(8位)、「もう少しだけ」(9位)と、TOP10に5曲がランクイン。「夜に駆ける」をきっかけにYOASOBIを知った多くの人が他の曲も好きになり、結果として彼らのファンになったということが伺える。

こうしたファン層の広がりの背景の一つに挙げられるのが、2021年上半期の継続的なメディア出演、そして挑戦と試みに満ちたオンラインライブだろう。2月には初のワンマンライブ『KEEP OUT THEATER』を新宿・ミラノ座跡地の工事現場にて開催し、同時視聴者数は4万人を記録。7月4日にはユニクロとコラボした「YOASOBI UT」の発売を記念した無観客生配信ライブ『SING YOUR WORLD』を開催し、同時視聴者数は28万人を記録した。

筆者の記憶には、今年初頭、紅白歌合戦の数日後にYOASOBIを取材したときのことが鮮明に残っている。大舞台を終えたばかりの安堵の気持ちを吐露しつつ、Ayaseは「去年以上に飛躍して駆け上がっていくぞという気持ちはあります」と力強く宣言していた。まさに、その言葉通りの活躍となったと言えるだろう。

【レコチョク上半期ランキング2021】 https://recochoku.jp/special/100901
【レコチョク上半期サブスクランキング2021】
▼上半期アーティストランキング2021  https://recmusic.jp/playlist/?id=6985
▼上半期再生ランキング2021   https://recmusic.jp/playlist/?id=6986
【dヒッツ上半期ランキング2021】https://selection.music.dmkt-sp.jp/ft/sys00381/

 

■2021年上半期ランキングは動画サイト、SNSから注目を集めたアーティストが上位に

YOASOBIだけでなく、YouTubeやTikTokなどの動画サイト、SNSから注目を集めたアーティストが上位に目立ったのも2021年上半期ランキングの特徴だ。

この背景には長引くコロナ禍による社会の変化がある。フェスやライブの開催は制限を受け、スマートフォンやPCを通して自宅で音楽やエンタメを楽しむ人が増えた。そのことによって、昨年に続いて2021年もSNSや動画サイトの影響力が強く働き、ネットカルチャー発のヒット曲が相次いだ。

なかでも社会現象と言っていいほどのセンセーションを巻き起こしたのが、Ado「うっせぇわ」。ボカロPのsyudouが書き下ろし、2020年10月にリリースされたメジャーデビュー曲だ。リリース当初にはメディア露出はほとんどなかったが、インパクト抜群の歌詞と圧倒的な歌唱力が10代を中心に注目を集め、2021年に入ってからはテレビでも話題が取り上げられ子供から大人まで幅広い世代に知名度が広がった。結果、同曲は「レコチョクランキング(シングル)」1位、「dヒッツ上半期ランキング2021」の「myヒッツランキング」1位、「レコチョク上半期サブスクランキング2021」の「再生回数ランキング」4位と、ランキング上位を席巻している。

優里「ドライフラワー」も2021年上半期を代表するヒット曲と言えるだろう。昨年にTikTokで大きな話題を呼んだ「かくれんぼ」のアンサーソングとして2020年10月25日にリリースされた楽曲だ。女性目線で失恋を歌った歌詞が共感を集め、優里の情感豊かなハスキーボイスの歌声の魅力もありロングヒットを記録。「レコチョクランキング(シングル)」3位、「dヒッツ上半期ランキング2021」の「myヒッツランキング」2位となった。

Ado「うっせぇわ」、優里「ドライフラワー」という2つのヒット曲に共通しているのは、タイアップもなく、リリース当時にはマスメディアへの露出がほとんどなかったということ。火付け役になったのはYouTubeやTikTokだ。とはいえ、他にもSNSや動画サイトでバズを集めた楽曲は多い中、なぜこの2曲が突き抜けたヒットとなったのか。見るべきポイントはリリースから2〜3ヶ月経ってからチャートアクションが本格化したことで、これはすなわち、YouTubeやストリーミングサービスの再生回数が「累計○億回突破」などという言葉と共にニュースとして情報番組などに取り上げられ、そのタイミングでテレビ視聴者の一般層にも認知が広まることで結果として社会現象的なムーブメントにつながったということを示している。

ただ、タイアップが力を失っているかと言えば、そうではない。むしろ2021年上半期はドラマや映画主題歌のヒットが多かったことが、ランキングからわかる。

選曲対象を2021年にリリースされた楽曲のみに絞ると、前述のYOASOBI「怪物」を上回り上半期を代表するヒットとなったのが、米津玄師「Pale Blue」だ。昨年に続き2021年上半期も「アルバムランキング」2位、「ハイレゾアルバムランキング」3位とロングヒットが続くアルバム『STRAY SHEEP』から約10か月ぶりとなる新作で、TBS系金曜ドラマ『リコカツ』主題歌として書き下ろした一曲。米津玄師自身が久しぶりに「真っ向からラブソングに向き合った」という新曲は、6月16日リリースゆえ集計期間は非常に短いながらも「レコチョクランキング(シングル)」4位、「dヒッツ上半期ランキング2021」の「myヒッツランキング」6位と上位にランクインしている。

また、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』 主題歌のLiSA「炎」は「レコチョクランキング(シングル)」6位、「ハイレゾシングルランキング」1位と、一大センセーションを巻き起こした去年に続いて上位にランクインしている。さらに「レコチョクランキング(シングル)」のTOP10を見ていくと、TVアニメ「呪術廻戦」オープニング主題歌のEve「廻廻奇譚」(8位)、日本テレビ系水曜ドラマ「恋はDeepに」主題歌のback number「怪盗」(9位)、映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』テーマソングの宇多田ヒカル「One Last Kiss」(10位、「ハイレゾシングルランキング」2位)などがランクインしている。特にダウンロード部門のランキングはテレビでの露出や話題性に結びつきやすく、こうした傾向もレコチョクのランキングの特徴と言えるだろう。

ただし、視聴率の高い人気ドラマ、観客動員数の多い話題の映画とタイアップすれば注目が集まるというような単純な話ではない。今の時代は、映画もドラマもSNSを通じた“考察”の話題性が広まることが作品のヒットに結びついている。それゆえ、主題歌についても作品の世界観や物語性に効果的に結びついた楽曲が支持を集めているのがポイントだ。映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソングとしてヒットしたAwesome City Club「勿忘」(「dヒッツ上半期ランキング2021」の「myヒッツランキング」4位)もその一つと言える。

 

■新たな才能の台頭に下半期も目が離せない

また、今回の「新人アーティストランキング」も興味深い結果となっている。ダウンロード部門「レコチョク上半期ランキング2021」では、ヴィヴィ(Vo.八木海莉)が「新人アーティストランキング」1位を獲得。オリジナルアニメ『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』のオープニングテーマ「Sing My Pleasure」を歌うシンガーだ。同作は100年後にAIが人類を抹殺する未来を変えようと歌姫として作られたAIロボットの「ヴィヴィ」が歴史改変に挑むというストーリー。物語の中では「Sing My Pleasure」だけでなく数々の劇中歌が歌われ、その多くの作曲と劇伴音楽を手掛けた神前 暁(MONACA)によるクオリティ高い楽曲と八木海莉の表現力豊かな歌声が注目を集めた。

ストリーミング部門「レコチョク上半期サブスクランキング2021」では、昨年に活動を開始した韓国発のグローバルボーイズグループENHYPENが「新人アーティストランキング」1位を獲得。日本デビューは7月6日にリリースされたシングル『BORDER:儚い』だが、それ以前に韓国でリリースされた2枚のミニアルバム『BORDER:DAY ONE』、『BORDER:CARNIVAL』の収録曲が再生回数を集めた結果だ。

韓国のアーティストとしては、もはや世界を代表するグループになったBTSが「Dynamite」(「レコチョクランキング(シングル)」7位、「レコチョク上半期サブスクランキング2021」3位)、そして「Butter」(「レコチョクランキング(シングル)」13位)と2曲のヒットシングルを上位にランクインさせ、ベストアルバム『BTS, THE BEST』は6月16 日リリースにもかかわらず「レコチョク上半期ランキング2021」で「アルバムランキング」上半期3位にランクインしている。ENHYPENもそれに続く存在となるかもしれない。

コロナ禍で大きく様変わりした音楽シーン。ランキングから明らかになっているのは新たな才能が頭角を現しているということだ。単に時流に乗ったということだけでなく、確かな才能と魅力を持つアーティストが支持を広げている。昨年のダウンロード、ストリーミング両部門で上半期に「新人アーティストランキング」1位を獲得した藤井 風も、「レコチョクランキング(シングル)」でHonda 「VEZEL e:HEV」CMソングの「きらり」を16位に送り込んでいる。

2021年下半期も目が離せない状況は続きそうだ。
柴 那典/しば・とものり

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は「AERA」「ナタリー」「CINRA」「MUSICA」「リアルサウンド」など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」、BOOKBANGにて「平成ヒット曲史」、SlowNewsにて「熱狂の復興」、雑誌「CONTINUE」にて「アニメ×ロック列伝」連載中。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。ブログ「日々の音色とことば」http://shiba710.hateblo.jp/ Twitter:@shiba710

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