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時に頑ななまでに、孤独な音楽環境に身を投げ込む。そして、そこから這い上がり、どういった歌を浮かび上がらせるのか。オリジナル・ラヴ、つまり田島貴男という人をながめながら興味が湧くのは、いつもそのことだ。それが見事に実った際、颯爽とした彼の後ろ姿しかみえなくなっていて、ぼくなんぞは惚れ惚れする。その点では、ピチカート・ファイヴの解散イベントへの出演にスカパラとの共演と2001年は印象深い出来事があった。大袈裟に言えば、今作は、彼がどれほどの器量だったか、それが占える作品かもしれないなあ、とも思いながら聴き始めて以来、その刺激的な音楽に浸りっぱなしだ。都会のどよめきというか、そこにうごめくありとあらゆるものを鋭いナイフで、サーッと切り裂いたような鮮やかさである。そして、その切り口に弾力のある断面を覗かせる歌の数々。妖しげなものあれば、痛みにふるえるものもある。いずれも、比類のメロディをもち、そこに激しく音の群れがぶつかりながら、歌を滲ませる。<br>大胆にして繊細、アコースティック楽器を過激に使い、現代という時代感覚で満たしていく。ことに、サックスが、ひとつの楽器の役割を超えてうまく使われている。アヴァンギャルドというか、ジャズからブルースまで混沌たる格闘。ラウンジ・リザーズ周辺の精鋭たちが、過去と未来にぶつかって着々と成果をあげてきたこと、それと重なるような方法論で、かつて渋谷系と呼ばれた人がそれを肯定的に捉え、歌の視界をずいぶん先にまで進めたような気配さえある。事実、東京以外には考えられない音なのに、いかがわしいほどに楽しい無国籍な感覚。ヒックスヴィルの木暮晋也らの参加、あるいは松本隆の作詞等々も含めて、この人ならではの必然性が感じられるが、それでいて、偶発的な面白みに抜きんでた世界。いいアルバムだと思う。(CDジャーナル)
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